熱中症対策Photo:PIXTA

 まだ6月だが、熱中症対策をおさらいしておきたい。

 熱中症は炎天下でのスポーツや労働中に生じる「労作性熱中症」のイメージが強いが、屋内でも「非労作性熱中症」が発生する。

 前者は圧倒的に若年~中高年男性に多く、めまいや頭痛が急激に発症する一方、仕事仲間など周囲が気づくため対応が速い。

 逆に非労作性熱中症は独居の高齢者に多い。数日をかけてじわじわ悪化するため、見守り訪問する人も気づきにくい。

 もともと高齢者は体内の水分貯留が若い頃より減っており、普段から「隠れ脱水」気味。さらに利尿作用がある薬や下剤を飲んでいる場合は、体内の水分不足に拍車が掛かる。こうした状況で高温・多湿の環境に曝されると、うまく発汗できず、脳の体温調節中枢が機能障害を起こしてしまうのだ。

 体表面積が小さく発汗機能が未熟な幼児も「熱中症弱者」だ。背丈が低い分、地面からの照り返しを受けやすく、常に大人の体感温度プラス2~3℃の暑さに曝されていると考えたほうがいい。

 熱中症対策の一歩は、環境省が提供する「暑さ指数」の活用だ。気温に湿度と日射、輻射熱を加味した指標で、28℃の厳重警戒域を超えると、熱中症で緊急搬送される件数がぐっと増える。

 暑さ指数25℃の危険域あたりから屋内でもクーラーを入れて、水分と塩分を意識的にとろう。70歳を超えている方はすでに脱水気味であることを自覚して、水を手元に置いておくといい。

 また、屋外での運動時は30分おきに休息をとり、スポーツドリンク等を飲んでほしい。暑さ指数28℃以上では激しい運動を中止し、軽度~中等度の運動でも10~20分おきに休憩をとること。

 熱中症の応急処置は(1)太い血管がある脇の下、首、脚の付け根を氷で冷やす、(2)冷たいぬれタオルで全身を拭く、(3)ぬれタオルで身体を覆い冷風を当てる、などだ。意識がはっきりしているなら、少しずつ経口補水液を飲ませよう。

 意識障害やけいれん、汗が出なくなるなど重症を示す症状が生じたときは、迷わず救急車を呼ぼう。ためらいは命に関わる。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)