公務員試験シーズンが本格化。本記事では、元NHKアナウンサーで、現在6刷2万8000部超のベストセラー『全試験対応!直前でも一発合格! 落とされない小論文』の著者、「ウェブ小論文塾」代表・今道琢也氏が、小論文執筆の基本テクニックの1つをお伝えします。(構成:編集部 今野良介)
「箱に入れて整理する」と、印象はこれだけ変わる
小論文試験で高得点を狙うには、「言いたいことを採点者にわかりやすく伝えること」が大切です。書いてある要素自体は悪くなくても、わかりやすく伝えられなければ、評価は下がります。
では、小論文における「わかりやすい文章」を書くポイントは何か?
それは、「箱に入れて整理する」ことです。
次の例題と解答を、ご覧ください。
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【問題】
大地震の被害を減らすために行政としてどのように取り組んでいくべきか、述べなさい。
【解答例1】
大地震の被害を減らすために取り組むべきことは、まず、行政職員が自治会単位で防災教室を開き、住民自身で防災袋の準備や避難経路の確認など、地震に備えることの重要性を啓発していく必要がある。この他、旧耐震基準で建てられた建物の耐震性を高めていく必要がある。病院や学校などの公共施設は、行政が主体となって耐震工事を急ぐ必要がある。個人の住宅については、旧耐震基準で建てられた住宅への耐震性診断や補強工事の費用への助成金制度を充実させるなどして、対策を促す必要がある。さらに大切なこととして、学校教育の中でも防災教育を強化し、地震が起きた際に取るべき行動を、子どもの頃から教えておくことにも取り組むべきである。この他、沿岸部の高い津波が予測される地域については防潮堤や津波タワーなどの整備をすることが重要である。少しでも被害を減らせるように、行政が中心となってこれらの施策を積極的に進めていくべきである。(以上)
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この答案は、書いてある内容自体は悪くありませんが、次から次へと対策を並べているため、採点者の頭に入りにくいです。
言わば、机の上に鉛筆や本や書類などが乱雑に散らばっているような状態です。机の上を整理するには、鉛筆は鉛筆立てに、書類は書類ケースにと、それぞれの箱にまとめて入れればすっきりします。小論文の書き方も同じです。似たようなものをカテゴリーで分けて整理すれば、書き手の頭の中が整理されますし、読み手も理解しやすくなります。
この答案の中に書かれてある対策は、大きく「ハード面」と「ソフト面」に分かれます。それに沿って、次のように整理すればよいのです。
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【解答例2】
大地震の被害を減らすために行政はハード、ソフト両面から取り組むべきである。
まず、ハード面としては、旧耐震基準で建てられた建物の耐震性を高める必要がある。病院や学校などの公共施設は、行政が主体となって耐震工事を急ぐ必要がある。個人の住宅については、旧耐震基準で建てられた住宅への耐震性診断や、補強工事の費用への助成金制度を充実させるなどして対策を促していく。この他、沿岸部の高い津波が予測される地域については防潮堤や津波タワーなどの整備をすることも重要だ。(この段落が「ハード面の箱」)
次にソフト面では、行政職員が自治会単位で防災教室を開き、住民自身で防災袋の準備や避難経路の確認など、地震に備えることの重要性を啓発していく必要がある。この他、さらに大切なこととして、学校教育の中でも防災教育を強化し、地震が起きた際に取るべき行動を子どもの頃から教えておくことにも取り組むべきである。(この段落が「ソフト面の箱」)
少しでも被害を減らせるように、これらハードとソフトの両面からの対策を積極的に進めていくべきである。(以上)
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このように、それぞれの「箱」に収めることで、読みやすさが全く変わります。
もちろんハード、ソフトという分類の仕方以外にも、「最優先で取り組むこと」と「その次の段階で取り組むこと」という分類の仕方もあるでしょうし、「行政が中心になってやること」と「市民の協力を得ながらやること」といった分類もあるでしょう。出題内容によっては、全体を3つのカテゴリーにわけるという方法もあり得ます。
いずれにせよ、採点者(読み手)の立場に立って、わかりやすく伝えようとする意識が大切です。
『落とされない小論文』では、18の頻出テーマの対策や、公務員試験で活用できる、小論文試験に一発合格する必要最低限の情報を凝縮して伝えています。ぜひ、直前対策に、そして基礎力の養成に使い倒してください。