サミットの三つの議題

 米中の対決は激しすぎて、もはや互いが容易には引き下がれなくなっている。そこで、開催国の日本が調整役としてうまく振る舞えば、存在感を高めることもできるかもしれない。具体的な議題は以下の三つだ。

「経常収支不均衡(グローバル・インバランス)」
「質の高いインフラ投資」
「国境を超えるデータ流通の国際ルールづくり」

 一つ目の「経常収支不均衡」は、6月8~9日のG20財務相・中銀総裁会議(福岡市)でも日本が議題に持ち出した。名目は「持続可能でバランスの取れた経済成長」を実現するためだ。

 ただこの裏には、”貿易赤字”削減にこだわるトランプ氏の誤解を解きたいという日本の思惑が透けていた。

 米国の貿易赤字額は世界一だ。トランプ氏は以前から「貿易赤字=負け、貿易黒字=勝ち」と単純に考えている節がある。そして二国間交渉にこだわり、赤字削減の意思を示さなければ追加関税を課すことで赤字が削減できると信じているかのようだ。特にその矛先は中国に向かっている。

 だが、モノの輸出入だけでなく、投資や配当金など総合的な国同士の取引結果を表す“経常収支”に目を向けると、違った景色が広がる。

 なにしろ、トランプ氏自身が主導した法人減税自体が財政赤字、ひいては経常赤字の膨張を促している面がある。米国は政府部門の財政赤字(貯蓄不足)が家計の貯蓄を上回り、国全体の貯蓄不足、つまり経常赤字となっている構造にあるからだ。

 さらに、トランプ氏が敵視する中国は貿易収支では3500億ドルあまりの黒字(2018年)とG20最大だが、経常収支では黒字額が500億ドルにも満たず(同)、世界首位のドイツ(約2900億ドル)と比べても決して黒字額が大きいわけではない。