「デジタル保護主義」が進む中国では法律の下、中国内で活動する外国企業が得た情報を国外に持ち出すことを禁じるなどの措置を取っている。
この姿勢には、中国内で事業を運営する外国企業の情報を政府(共産党)が奪っているものだと米国がかねて批判してきた経緯があるのだ。国際的なルールを作ることで、このデジタル保護主義の瓦解を狙う。
3つの議題で議論をうまくリードできれば、日本の利益にもなるし、米国に恩を売ることもできるだろう。しかし、日本の調整は難航する可能性が高い。
まず、「経常収支で説得」については、すでに“実績”がある。
トランプ氏が貿易赤字にこだわる姿勢はG20福岡会合後も変化がみられず、むしろ貿易赤字の元凶がドル高にあるなどとして、為替動向を問題視し始めている始末。サミットの共同声明に「保護主義に対抗」という文言を入れるには至らないだろう。
また中国にとって、「一帯一路」は国家の最も重要な長期戦略であり、何が何でも実現したい悲願に他ならない。今年に入ってからもイタリアと覚書を結んで欧州の取り込みも行うなどのしたたかさは相変わらずで、「債務の罠」外交の手法を簡単に変えられるとも考えにくい状況だ。
国外へのデータ流通も、共産党が国内のあらゆる管理を行う体制にあって容易に認められる話ではない。
つまり、三つの議題は米中の指導者にとって、自らの支持基盤や権力の維持に直結する問題でもあるのだ。外交手腕には自負がある安倍首相にも荷が重い。
となれば、サミット後も二大国のエゴが絡み合う世界経済の足かせは、なかなか外れないことになる。朗報を待ちたいところだが、現状は考えれば考えるほど、サミットの場だけでは解決の難しい問題が山積している様が浮かび上がる。