解散総選挙、国民再投票の可能性も

 では、やはり合意なき離脱となるのか。議会からは何も手を打てないのか。議会の奥の手は内閣不信任案とみられる。提出された場合、不信任案が成立する可能性は十分にある。

 現在、保守党と閣外協力の民主統一党を合わせた議席は322、対する野党は317。「保守党にも7名と少数ではあるが残留派の議員がいる」(田中理・第一生命経済研究所主席研究員)。合意なき離脱を回避するために、3名が造反して内閣不信任案に賛成すれば、成立する。不信任案が可決されれば、新首相は総選挙に打ってでるだろう。

 EU内では、離脱期限の延期にも反対する声が上がっている。しかし、国民の意思を問うための総選挙となれば期限の延期には応じざるを得ないだろう。合意なき離脱となれば加盟国であるアイルランドに大きな混乱をもたらすと予想されることも離脱期限の再延期の容認へとEUが動く理由となるだろう。

 総選挙となった場合、保守党は強硬離脱を訴え、欧州議会選挙で第1党となったブレグジット党へ流れた離脱支持票を取り戻そうとするだろう。ブレグジット党はもちろん強硬離脱をかかげる。

 労働党は関税同盟に残留するといった穏健な形の離脱と、その案と残留を選ぶかの国民党投票実施、自由民主党は二度目の国民投票をかかげて選挙戦を戦うことになると予想される。

 この選挙結果が英国のEU離脱の行方を左右する。保守党が単独過半数に至らなくともブレグジット党と組んで政権を担うとなれば、EUとの再交渉がありえないため、合意無き離脱の可能性は消えない。実味を帯びてくるだろう。労働党が中心の内閣となれば、国民再投票の可能性が大きくなる。

(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)