ところで、なぜ政府はこれほど急激に、全力かつ強制的に上海をモデルにごみの分別に踏み切ったのか。

政府の推進で
猛スピードで変わる社会

 その理由は、長らくごみが大きな社会問題となっているからだ。経済が発展し、人々の暮らしが豊かになるにつれ、ごみの量が急激に増えている。ごみの埋立地はすでに満杯で、川や空き地への不法投棄も目立ち、環境汚染が日々深刻となっている。これまでいく度もごみの分別を試行してきたが、いつも途中で挫折し徹底できなかった。

 しかし、今回ばかりは本気のようだ。

 中国全土668都市のうち、約3分の2は周囲をごみ処分場に包囲されており、4分の1はごみの埋立地を持たない。あと数年もしたら、ごみの埋立地が満杯になる都市も増える。上海市の常住人口は2400万人、流動人口600万人、毎日処理するごみは2万6000トンもある。そういった理由から、政府はまず上海から実験的にごみの分別収集を実行し、2020年までに全国の46都市に導入する計画である。

 ごみの分別は住宅地だけでなく、上海の全寮制の大学も対象であり、大学職員や学生ものんびりしてはいられない。

 キャンパス内のごみ箱はすべて撤去され、新しい分別ボックスが設置された。そのため、新しいごみ捨て場の地図が全学生に配られた。さらに、大学側は啓蒙活動のため、日本人留学生に「日本でのごみ分別の実態」を話してもらうという事例が相次いでいる。その話を聞いた上海の中国人学生らは「日本の煩雑なごみの分け方と比べたら、我々は楽勝で、まだ小学生レベルだ」などと語り、一様に驚くのである。

 現在、中国は政府による強力な推進力で、社会が猛スピードで変わっている。

 その象徴的な事例が、車のクラクションの禁止である。これまで上海市をはじめ、中国の大都市では車のクラクションが激しく、その喧騒(けんそう)が「名物」でもあった。ところが、車のクラクションや、その原因となる無断車線変更が禁止となり、街は一気に静かになった。

 今回のごみ分別についても、政府は罰金にとどまらず、QRコード、顔認証、個人スコアなど、中国が得意とするITを駆使して、徹底させようとしている。

 一度、意識に点火されると、中国人のパワーは力強く、一気に展開していくのだ。