すると、酸素化(酸素が血液に取り込まれること)がよくなったり、換気(血液が二酸化炭素を肺胞に放出し、それが呼吸によって体外に出されること)がよくなったりと、呼吸器の改善に高い効果を発揮します。
 また、寝たきりの患者さんの場合、ずっと同じ体勢でいると換気できない場所が増え、重力によって肺の中の同じ場所に痰が溜まってしまいます。
 誤嚥性肺炎の予防のためにもうつぶせは大変いいものですし、とても大切な体位だと思います。

 小さい子どもを見ていると、本を読むのも遊ぶのも、床の上でうつぶせになっている時間が多いことに気づかされます。
 年齢を重ねてうつぶせになるのが難しくなるのには、筋力や柔軟性の問題もありますが、そもそも「うつぶせ」という概念がなくなっているからではないでしょうか。
 1日1分うつぶせになることが習慣になれば、体はかなり変わってくるはずです。

 薬を処方する立場からすると、うつぶせを日常的に取り入れることによって今より眠れるようになったら、血圧が下がってきたら、緊張が取れてきたら……、現在たくさんお薬を飲んでいる高齢の方で、たとえ1つでも薬が減れば、その人の毎日にとっては非常に大きなことです。
 現在、眠れないと悩む人が多くいます。
 眠れないのは高齢者に限りません。
 若い人でも仕事などでストレスを過剰に抱えていて、常に緊張しています。
 それを改善するきっかけとしても、ぜひ早いうちからうつぶせを取り入れてみていただけたらと思います。

岡田真理子(おかだ・まりこ)
総合内科専門医。医学博士。まりこ中町内科院長
大阪医科大学卒業、神戸大学大学院医学系研究科循環呼吸器病態学講座博士課程修了。2017年より現職。


 正しいうつぶせのやり方、注意事項、さまざまな効果、うつぶせを応用した簡単なエクササイズは、『うつぶせ1分で健康になる』をご覧ください。
 また、本書ではうつぶせになることが難しいという人のための半うつぶせ姿勢(半腹臥位・はんふくがい)も紹介していますので、参考にしてみてください。