顧客データベースで
会社の価値が健在化
社長の思いを引き継ごうと手を上げたのは、まったく異業種の大手高級車販売会社でした。
しかも、この会社は破格の評価をつけてくれたのです。社長は会社を手放すことを決断します。
高級車の販売会社が高い買取価格をつけたのは、この旅行会社が持つ顧客情報が充実していたことが評価の理由でした。
ゴルフツアーに参加する顧客データを調べると、ほとんどが「超富裕層」であることがわかりました。平均年収は数千万円、経営者、医師、弁護士、元大企業のOBなど、ツアー代金が100万円から150万円という金額を、苦もなく払える所得水準の顧客が1万人ほどいました。
ただ、この会社は顧客情報をリスト化していませんでした。そこで、アクティブな顧客は年に何回か旅行に行くので、その都度顧客アンケート調査を実施し、顧客カードを揃えることにしました。問題は、顧客の個人情報を他に流用する許諾が得られるかどうか。普通、個人情報の流用は嫌がられますが、この会社はオーナーと顧客との関係が親密だったので、100%の許諾を得ることができました。
大都市圏の富裕層という、高級車販売会社にとっては自社の商品と重なる顧客情報を持っていたことで、その顧客にクロスセールスができる可能性が評価され、高い買取価格になったのです。
つまり、顧客データベースを整えたことで、会社の価値が顕在化したことになります。これは「見える化」という作業で、さらに「使える化」したことで顧客情報に価値が生まれたのです。仮に見える化ができても、情報の使用許諾がないと使える化にはなりません。見える化と使える化の重要性は、顧客情報のみならず過去の研究開発情報や会社のノウハウにも当てはまります。