『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。

クレーム対応はこれだけ! 「そうなんです」と言わせよう

 お客さまの怒りをコントロールし、クレームを解決に導くのが、私の30年にわたるクレーム対応経験から編み出した「超共感法」です。

 超共感法は、クレームを言うお客さまに「強く共感」して解決を図るものではありません。むしろ、その逆。最大の特徴は、クレームのお客さまに「共感する必要がない」点です。

 共感すること自体はクレームの解決に一定の効果をもたらしますが、すべてのお客さまに共感しようとするのは、担当者にとって負担が大き過ぎます。それに、解決に時間がかかります。ですから、超共感法では、相手の話を傾聴しません。

 することは、じつにシンプルです。

「怒っているお客さまに『そうなんです』(YES)と言わせる」

 たったこれだけです。「そんなことで本当にクレームが解決するの?」という声が聞こえてきそうですが、拍子抜けするくらい簡単に解決します。

 実際、私がコンサルタントを務める各企業で採用されていて、「苦情を言ってきたお客さまがリピーターになった」「激怒していたお客さまが笑顔で帰っていった」「怒りが解けたばかりか感謝までされた」というように、その効果は実証済みです。

YES言葉を引き出す「超共感法」が効くワケ

 では、なぜ「そうなんです」と言わせるだけで相手の怒りが鎮まるのでしょうか?

 お客さまの怒りを鎮めるには、まずはそのテンションをトーンダウンさせる必要があります。そして、怒りの感情に支配されたお客さまの「否定脳」を、こちらの言葉に耳を傾けて受け入れようとする「肯定脳」に導かなければなりません。

 じつは、この否定脳を肯定脳に導くのに、ちょっとしたことに「そうなんです」などのYES言葉を言わせることがとても有効なのです。

 コーチングやカウンセリングで使われる「オートクライン」という脳の作用をご存じでしょうか。自分が発した声を自分の耳で聞いて、脳が勝手にそれを認識して考えたり、行動したりする作用です。

 クレームを言うお客さまの脳は「つねにダメを探している」状態です。しかし、その脳に自分の声で「そうなんです」と聞かせると、脳は勝手に考え始めます。それまでダメを探していた「NO脳」が、自分の発した「そうなんです」というYES言葉で、「あれ? YESでいいんだ」と立ち止まるのです。

 超共感法はこの作用を応用したものです。まずは肯定しやすい言葉を投げかけ、「そうなんです」とうなずかせます。それだけで、お客さまの怒りはほぼ解消します。自分の怒りや窮状をこちらに「共感してもらえた」という感情を持つからです。

 そのうえで、クレームの解決法を提示するのです。この「そうなんです」を言わせるステップを踏むことで、その後の対応がスムーズに運び、お客さまの怒りを消すどころか、感謝されてクロージングできるのです。

 実際にあったケースを題材に、超共感法のアプローチ方法について見ていきましょう。

ケース:保育園の保護者からの逆ギレクレームへの対処法
 保育園のお迎えの時間が過ぎているのに、保護者が迎えに来ないお子さんがいます。夜のお迎えは母親が担当しているようですが、これまでも約束の時間が守られないことがしばしばありました。

 その日も連絡がないまま、保護者が姿を見せません。子どもは疲れとさみしさからぐずり出しました。そこで、お腹を空かせては可哀想だと思い、保育士が子どもにソフトせんべいを一枚食べさせているところに、やっと保護者が迎えに来ました。

 すると、子どもが手に持ったソフトせんべいを見て、その保護者は怒鳴り出したのです。「今おやつを食べたら夕飯を食べられなくなるでしょ! いったい何を考えてるんですか!! それでも保育士なの?」
 矢継ぎ早にまくし立てられ、保育士は戸惑うばかりでした……。

 こんなとき、どんなファーストアクションを取れば、「そうなんです」と相手に言わせ、無事怒りを鎮めることができるでしょうか? 次の3つの選択肢のうち、あなたはどれを選びますか?

(1)とにかく怒りが収まるまで下を向いて謝る。
(2)規定の時間が過ぎていることについて相手を責める。「お母さんのお迎えが遅くて〇〇ちゃんがぐずっていたから対応していたんです!」
(3)大きな声でリズム良く、「お母さん! 〇〇ちゃんの夕飯、たしかに心配ですよね」と返す。

 「(1)」のようにおびえてうつむいているだけでは、相手からYES言葉は引き出せません。それどころか、保育とは関係のない、保護者の日頃の疲れやうっぷんをひたすらぶつけられ、怒鳴られて、あなたにはストレスしか残らないことでしょう。

 「(2)」のような対処は、相手が腹を立てて「NO脳」状態になっているとき、その指摘がいくら的確でも受け入れられることはありません。それどころか、逆ギレされるかもしれません。

 正しい対処は「(3)」です。意外かもしれませんが、相手の怒りを認めてあげるのです。すると、「そうよ! 心配だから言ってるんでしょ!!」と返事が戻ってくることでしょう。これで、怒り口調ながらも相手の同意を得ることに成功しました。

 こうなればしめたものです。相手の心理はこちらの言い分を聞き入れることができる状態に傾き始めます。正しいことを口にしていいのはこの後です。

 このケースでは、「私たちも心配していたんですよ。お腹が空き過ぎてリズムが崩れると、逆に食欲が落ちることもあるので、甘いものを避けてソフトせんべい1枚にしてみました」と説明しました。

 この後、保護者の態度は大きく軟化しました。「お腹が空きすぎるのはよくないのはわかっています。だから私だって、家に帰ったらすぐ食べられるように、作り置きはしてあるんですよ」と話し始めたのです。この日以来、連絡のない遅刻はピタリとなくなりました。

「敵」ではなく、「味方」と思わせるのがポイント

 このように、相手の気持ちを汲み取った声かけで「そうよ」と言わせ、怒りをトーンダウンさせ、肯定脳に導いてからクレームの解決法を提示しましょう。

 先の例では、連絡もなく遅れるほうが悪いに決まっていますが、相手も好きでそうしているわけではありません。「遅れるときは連絡してください」ときつい口調で伝えると、「こっちだって忙しいんです!」と言い合いになりかねません。

 正論を伝えることがみなさんの目的ではありませんよね。クレームの解決が第一のはずです。正しい説明にとらわれて、相手から敵対視されるのは、話をこじらすだけです。

 それよりも、相手の立場を理解する言葉を投げかけ、「そうなんです」と言わせることに注力しましょう。相手への「共感」ではなく、「理解」でOKです。ことちらを味方として認識してもらえば、解決に向けてスムーズに話は進んでいくはずです。