夏はウイルス性感染症が猛威を振るう季節だ。
今年はすでに「手足口病」の患者数が過去10年間の同時期を上回るほか、6月中旬以降「ヘルパンギーナ」がじわじわ増えている。
手足や口腔~舌先に水疱性の発疹が現れ、38℃以下の熱が出る「手足口病」は、4歳までの乳幼児を中心に毎年流行する感染症。
文字通り手足や口などに水疱性の発疹がでるが、通常は1週間以内に消失する。主な症状が消えた後の2~4週間はウイルスが便中に排出されるので、兄弟姉妹間や看病していた母親、父親へと感染することがある。
「ヘルパンギーナ」は突然の発熱とのどの痛みに続き、口の奥の「のどちんこ」周辺に集中して赤い水疱ができることが特徴。表面が破れて潰瘍になることが多く、小さい子供は口の中の痛みのために食事や授乳を嫌がるので、脱水症状に気をつけたい。
こちらも長期間、ウイルスが排出され続けるため家庭内の感染リスクは高いので注意が必要だ。
また「咽頭結膜熱・結膜炎」も真夏に流行する感染症だ。いわゆる「プール熱」で、発熱、倦怠感、食欲不振など風邪のような症状とのどの痛み、眼の充血、目やになど眼の結膜の炎症が数日間続く。眼の症状が強い場合は眼科を受診したほうがいい。学校安全法では「第二種伝染病」に位置づけられており、原則として症状が治まった後2日を経過するまでは、登園・登校停止となる。
これら「夏の三大感染症」を治療する特効薬はない。熱や痛みなどの症状一つひとつに対応する対症療法が中心となる。
前述の脱水症状を予防するほか、家庭内感染・再感染を予防するためにトイレ後の手洗いを徹底すること。特に患児のオムツやパンツを処理した後は、せっけんを使い流水の下で「ゴシゴシ」と物理的にこすり洗いをしよう。また、原因ウイルスは消毒薬に対する抵抗性が強いので、使用済みタオルやリネン類の消毒は熱湯を使うといい。タオルの共有は避けたい。
せっかくの夏休みに「一家でダウンしていました」とならないよう、ご用心を。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)