『役所窓口で1日200件を解決! 指導企業1000社のすごいコンサルタントが教えている クレーム対応 最強の話しかた』の著者でクレーム対応のプロ、山下由美さんがこれまでにない画期的なクレーム対応の話しかたを初公開。「怒鳴る」「キレる」「自分が正しいと言い張る」「理詰めで責める」「言い分が見当違い」「多人数で取り囲む」「シニアクレーマー」などあらゆるお客さまからのクレームを、たったひと言「そうなんです」と言わせるだけで解決します。

怒りはお客さまのSOS! 背後にある「感情」をキャッチする

 相手を怒らせたり、怒らせそうな事態に必要なのは、その場しのぎのマニュアル対応ではありません。怒りの原因を見極めるとともに、お客さまがどんな感情を抱いているのかキャッチすることも大切です。

 たとえば、怒りの表面的な原因が「レジで待たされたこと」であっても、お客さまの感情はさまざまです。

「子どもが一人で留守番しているので早く帰りたい。何かあったらどうしてくれるんだ!」
「自分の後ろに並んでいた人がほかのレジに案内されて先に会計を済ませている。この店は自分のことを軽く見ている!」
「今日は会社でも理不尽なことがあった。今もレジの進みが遅いのは自分の列だけ。なぜ、こんな目に遭わなければならないんだ!」

 怒りはその人の「SOS」です。「助けてくれ!」という心の悲鳴です。表出している怒りの陰には、「悲しい」「悔しい」「不安だ」「恥ずかしい」などの感情が隠れています。

 私の編み出したクレーム解決法の「超共感法」は、クレームのお客さまに「そうなんです」と言わせるための声かけをして、こちらを味方として認識してもらうことからスタートしますが、その際にお客さまの感情をきちんととらえていると、早く「そうなんです」のひと言を引き出すことができます。

 逆に相手の感情に関心を寄せず、その場しのぎでマニュアルどおりにクレーム対応をしてしまうと、次のケースのような結果を招きます。実際に私が体験した出来事です。

ケース:ジョッキにガラスの破片
 ある暑い日、居酒屋に行った時のことです。ジョッキに注がれた、キンキンに冷えたビールをおいしく飲んでいました。3分の1ほど飲んだ頃でしょうか。ジョッキの底から、かすかにカラカラという音が聞こえてきます。「あれ?」と思い、よく見てみたら、なんとガラスの破片が沈んでいました。

 私は若い女性店員を呼び、小声で「ジョッキの中にガラスのかけらが入っていましたよ」と伝えました。大ごとにする気はなかったのです。女性店員は「あっ、申し訳ありません」と小さくなってジョッキを下げ、すぐに新しいビールを持ってきました。マニュアルどおりの対応だったのかもしれません。

 しかし、私はこの対応に「えっ⁉ それで済む問題? 口の中を大ケガしていたかもしれないし、ひょっとしたらすでに破片を胃袋の中に取り込んでいるかもしれないのに」と、少し腹を立てました。

 再び女性店員を呼び、「ちょっと店長さんを呼んでくれるかな」と静かではありますが、強い口調で頼みました。すぐに彼女はバックヤードに責任者を呼びに行きました。すると、奥から怒鳴り声が聞こえてきました。

「おかしいだろ。なんで俺が対応しなきゃならないんだ! ビールは俺の責任じゃないだろ‼」

 結局、少しして女性店員が戻ってきて、「今日のお代は結構ですので」と伝えてきました。もちろん私は金銭など少しも望んでいませんでした。お粗末な対応にがっかりし、その後、私がこの店に行くことは二度とありませんでした。


 この話を読んで、みなさんは「店長の怒鳴り声が聞こえてきたのはともかく、一般的な対応ってこんなものでしょ? 飲食代がタダになったならそれでいいじゃない」と思うかもしれませんね。

 けれども、クレーム・コンサルタントの私に言わせると、見過ごせるものではありません。いえ、一人のお客の立場から言わせてもらっても、責任者の対応は一人の人間として失格です。

 ジョッキの中に破片を発見した時、私は「もし飲んでいたらどうしよう……」と不安でした。

 女性店員に悪意がなかったことは頭ではわかりますが、私に見せたのは「マニュアルどおりに対応して、「お客さまの怒りから自分や店を守る」という保身に走る姿でした。それを見た私の気持ちは、不安から憤りに転じたのです。

解決策を示すのは、お客さまの感情に届く言葉を投げてから

 このケースで真っ先にすべき対応は、「小さい破片を飲み込んでしまったかもしれない」という不安を汲み取り、その不安を和らげることでした。最初に「お客さま、おケガはありませんでしたか?」という相手の身を案じる言葉かけをするのが正解です。

 そして、「お口に入るビールにガラスだなんて本当に申し訳ございません」と続ければ、「そうよ。本当に気をつけて」と言いつつ、私の不安や怒りは和らいだことでしょう。

 そのうえで、「万が一、体調に変化があればすぐにお知らせください。何かあったときのために、お名前とご連絡先をいただけますか?」とフォローすれば、店の対応に満足し、その後も私はそのお店に通い続けたはずです。

 このように、クレーム対応においては、クレームの「原因」だけでなく、お客さまの「感情」をキャッチすることが重要です。その感情に届く言葉を投げかけることで、「そうなんです」のひと言を引き出し、怒りを一気にトーンダウンさせることが可能になります。具体的な解決策等を提示するのは、その後です。