他人からどう見られているのか気になって仕方ない
――SNSにのめりこむ心の仕組み

 ここで面白い研究を紹介したい――2000年に、ある心理学者のチームが、学生に不本意な服装をさせるという実験をした。被験者は、往年の名歌手バリー・マニロウの顔写真がついたTシャツを着て、他の学生が大勢いる部屋に入っていかなければならない(事前のテストで、大学生全般が、この顔写真つきTシャツを着て公衆の面前には出たくないと思っていることを確認している)。研究者は、不幸な被験者をしばらくその部屋に放置してから、連れ出して、仲間の何人がTシャツに気づいたと思うか考えさせた。被験者は自分の着ているTシャツが気になって仕方がないので、「部屋にいた学生の半分は気づいたと思う」と答える。だが実際には、5人に1人しか気づいていなかった

 インスタグラムで3件しか「いいね!」のつかない失敗作の写真は、いわば、このバニー・マニロウのTシャツのようなものなのだ。本人は恥ずかしく感じ、みんな気づいて笑っているだろうと思うのだが、実際には誰もが自分自身の写真を気にすることで忙しい。または、前後に延々と流れてくる写真を見ることに忙しく、1枚の駄作など気にかけもしない。

 それなのに、否定的なフィードバックがつく可能性を恐れて、多くのユーザーが投稿前に何百枚も写真を撮り直したり、画像加工に精を出したりする。「フェイスチューン」のような加工アプリを使えば、テクノロジーにうとくても、欠点を修正して「完璧な肌、完璧な笑顔」にすることが可能だ。傷あとは消せばいいし、白髪も色を加えればいい。顔や体型も変えられる。