ネット検索はしない
他人を眺めて妄想している

――今はスマートフォンのように、多くのコンピューターが無線でインターネットに接続しています。今もう一度「攻殻機動隊」を作ったら、無線接続になりますか。

 今でもケーブルをぶち込みます。コンピューターが分かっている人間なら誰でも知っているけど、その方がノイズは入りにくいから。

 だいたいiPhoneみたいなものは僕にとって、妄想を喚起するアイテムではあるけれど、自分がそれを使う気は毛頭ない。インターネットもそうです。ほとんど検索したことがありません。

――じゃあ何から妄想して、作品を作るんですか。

 他人を風景として眺めて妄想するんです。僕は現実的なものには、興味があまりないんですよ。

 SFが好きなのも一緒で、妄想できるものだから。日常的なドラマを作りたいと思ったこともない。結局、日常から何かしら飛躍していないと、僕にとしてはものをつくる動機が生まれない。

 SFが僕をこうさせたのか、もともとこういう人間だからSFが好きなのかは分からない。とにかく、僕は人間にあまり興味がないんですよ。自分の人生も含めて、どこか他人事なんです。上の空で生きているってよく言われます。人類の運命とか存亡とか、そういうことには興味津々。でも人間の心的葛藤には全然興味がわかない。

 SFにも文芸寄りのSFっていっぱいありますが、僕には「そんなSFだったら文芸作品を読めばいいじゃん」としか思えない。男女の関係だとか肉親の確執だとかって話は、聖書から延々と続く世界ですよ。やればやるほど分からなくなるに決まっている。

押井守
Photo by M.K.

――人間の内面に興味のない押井さんが今回、人生相談の本(『押井守の人生のツボ』、東京ニュース通信社刊)を出したわけですね。葛藤に関心がないほうが、ズバッと鮮やかな答えが出せるのかも。

 自分ではそう思っているんですよ。内的葛藤なんて、ちょっと見方を変えると実は全然大したことがないものです。

――日本企業の悩みを勝手に代弁して、ひとつ相談をさせてください。「未来に何が起こるか分からない。この先何をすれば稼げるのか分からない。中国みたいな国から出てくる新興企業に勝てる気も全然しない。どうしたらいいですか?」。

 ハハハハハ! 僕は経済評論家ではないけれど、他人事として面白がっている目で見れば、「そんなことになるのは当たり前」です。

 かつてのソニーやホンダみたいな、技術というものを面白がる企業って今はほとんどない。眼前の状況への適応に特化することで、最大の利潤を引き出そうというあり方に、ほとんどの日本企業が移行しちゃったんですよ。企業である以上、利益をまず出さなきゃいけないとか、最小のコストで最大の利潤を引き出すにはどうするかといった発想は、一見すると正しく見える。

 でもちょっと考えればすぐ分かるように、この発想じゃ中長期的には右肩下がりになるに決まっている。スティーブ・ジョブズがやったような、世の中に合わせるんじゃなくて、自分が生み出すものが世の中を変えていくっていう発想と全く逆を日本企業はやっているんだもん。