今回発表された報告は、1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2000人(40~59歳)のうち、2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した1244人(脳卒中罹患者は除外)のデータを解析したもの。こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、1244人中421人が軽度認知障害、60人が認知症と診断された。
年齢、性別、教育歴、アルコール摂取、喫煙、運動、魚摂取量で調整した上で、軽度認知障害・認知症のリスクを検討すると、糖尿病では認知症リスクの有意な上昇が認められた。さらに糖尿病とがんを併発していると認知症リスクはより顕著となり、両者とも罹患していない場合に比べオッズ比が約16倍になった。また両者を併発している場合は、軽度認知障害のリスクも有意に上昇することがわかった。なお、がん単独では軽度認知障害・認知症の有意なリスク上昇はみられなかった。
糖尿病でがんのリスクが上昇する機序としては、インスリン抵抗性の関与が想定されている。また、がんの罹患後にインスリン抵抗性が亢進するとの報告や、インスリン抵抗性が認知症の発症に関与するとの報告もあることから、今回の結果について研究グループでは、「がんと糖尿病を併発した群は他の群よりもインスリン抵抗性が高く、結果として認知症リスクが上昇した可能性が考えられる」と考察している。(HealthDay News 2019年8月26日)
Abstract/Full Text
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/pcn.12905
Press Release
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8259.html
Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.