便座に座り、いざ用を足そうとしてもなかなか出てこない便秘症。便秘が数日間つづくと、なかなかスッキリせず気をもんだ経験がある人もいるだろう。じつは便秘の弊害はおなかの不快感だけでなく、“経済的損失”もバカにならない。(清談社 真島加代)
便秘の人は生産性が低い
損失額は年122万円にも!
2019年5月にアメリカ・サンディエゴで行われた消化器学会で、日本人の慢性便秘症と健康関連クオリティー・オブ・ライフ(以下、QOL)に関する調査結果【*】が発表された。なかでも注目を集めたのは「慢性便秘症の人は年間122万円の労働生産性損失をしている」という調査結果だ。
「調査の結果、慢性便秘症患者の労働生産性は、非便秘症患者よりも約1.7倍低いことが判明しました。慢性便秘症患者の労働生産性の低さを日本人の平均賃金で換算したところ、年間で約122万円の経済的損失が発生していることもわかったんです」
こう話すのは、同調査を実施した兵庫医科大学病院内科学・消化管科主任教授を務める三輪洋人氏だ。年間で約122万円の経済的損失とは穏やかでないが、三輪氏は「慢性便秘症患者の労働生産性が低い理由は主に2つある」と話す。
「1つは、慢性的な便秘が健康関連QOLを下げることが大きく影響しています。便秘が招く『膨満感』や『残便感』などの症状によって、精神的に苦痛を感じることがQOL低下の主な原因であることが報告されています」
【*】慢性便秘症に対する健康関連QOLと労働生産性に関する研究/NHWS2017に含まれる日本人3万1人を対象に、慢性便秘の有病割合及び患者背景を調査し、慢性便秘症患者(n=963)と非便秘症患者(n=963)のQOL及び労働生産性を比較。