「こういうときには、こうする」の引き出しを増やす

「この後、軽くどう?」

仕事終わりに突然、そう言って誘われたとき、相手が苦手な先輩ならとっさに理由を見つけて断るし、尊敬している上司なら一も二もなくついていく。そんな対応を、みなさんもごく普通にとっているのではないでしょうか。

行く(行かない)ことによる効果(つまらない話でムダな時間を過ごさずにすむ、上司に自分をアピールするチャンスが得られる……)をいろいろ考えてから結論を導き出して、断ると決めた場合は、いくつもの理由の中から最適なものを選び出す。こんな時間のかかることはしないはずです。

つまり、無意識のうちにOODAループ思考で言うところの「ショートカット」を実践しているのです。

こんなことが可能なのは、みなさんの頭の中の引き出しに、「こういうときは、こうする」という答えが予め備わっているからです。

でも、すべての事柄について引き出しが用意されているわけではありません。相手の想定外の反応や初めての状況に遭遇すると、答えに詰まったり、決断できずにぐずぐずしてしまう。それが普通でしょう。

しかし、OODAループ思考を意識して実践していると、「こういうときには、こうする」の引き出しがどんどん増えてきます。

「あ、いま自分はそれほど注意深く〔みた〕わけでもないのに、〔わかって、うごいて〕いたな」とか、「いまは〔きめて〕から、もう一度〔みた〕ぞ」といった具合です。

その結果、頭の中の引き出しが増えて、より多くの場面でショートカットを駆使して、柔軟に素早く対処できるようになります。OODAループ思考は誰がやっても同じではありません。だからこそ、自分のものにできれば大きな武器になります。

入江仁之(いりえ・ひろゆき)
アイ&カンパニー・ジャパン代表 経営コンサルタント 経済同友会会員
OODAループやサプライチェーンをはじめ全体最適・自律分散の先進的なモデルを提唱し、日本で最初期に導入。OODAループは、これまでに延べ1万人以上が体験し、導入企業では劇的かつ持続的なエンゲージメント、そして生産性向上を実現している。主なクライアントは、トヨタ自動車、日立製作所、GE、NTTグループをはじめIT、ハイテク、消費財などの各業界を代表する日米の企業。米国シスコ本社で戦略担当部門マネージングディレクターとしてエコシステムの構築をグローバルで指揮。ハーバード大学にて米国流の自ら考える教育を体験。外資系戦略コンサルティングファームの日本・アジア代表を歴任。PwCコンサルティングでは、合併統合により1000人規模の組織を構築し経営を統括。アーンスト&ヤングコンサルティングでは赤字だった日本法人を1年で世界最高の利益率を誇る事業に転換。経済同友会にて経済成長戦略委員会副委員長、情報処理推進機構にて情報処理技術者試験の試験委員、港区立青南小学校でPTA会長などを歴任。2015年からはOODAループ関連の論文をホームページで公開。直近半年での閲覧数が30万になっている。著書に『「すぐ決まる組織」のつくり方―OODAマネジメント』(フォレスト出版)等がある。