モイシュ氏は「大きなプロジェクトなので施工会社を後から入れる。コンセプトの決定後、設計事務所が施工会社を選ぶ方が効率がいい」と語る。ただこれは、仕事の範囲が広い日本のゼネコンと違って、海外のゼネコンは設計か施工のどちらかを行うなど専門分野がはっきり分かれているという事情も関係しているようだ。
国内の大手デベロッパーや設計事務所の関係者は、「ゼネコンが設計・施工をするケースもあるが、内訳をよく見るとコストが割高だったりすることがある。本当に施主にとって良い提案になっているのかよく見極めないといけない」「事情を知っていて、ゼネコンに設計・施工を絶対に発注しない施主もいる」とゼネコンの主導に懐疑的だ。
日建設計の村尾氏は「われわれ設計者は設計だけでなく、施工もよく分かっている。だからゼネコンと同じように施工を提案できる」と自信をのぞかせる。
日建設計は、3次元に時間軸を加えた4次元で工事を仮想竣工する4Dモデルジェネレーションを導入することで、図面発注時に施主やゼネコンとコストを共有できるように環境を整えた。
BIMの活用を拡大すれば、いずれフローの下流に当たる施工段階でもBIMは活躍するだろう。ゼネコンと職人たちの間で工事の課題を共有するときに役立てることだってできる。最新技術によって設計事務所とゼネコンの仕事は近づきつつある。そしてBIMの活用は、工事の透明性を高める。
近年、大手ゼネコンの売上高は2兆円前後(19年3月期)と巨大化しているが、設計事務所の規模はまだそれよりもずっと小さい。国内首位の日建設計でも売上高は420億円程度(18年12月期)。しかし、武器となるのは規模ではない。進化する技術を武器に、事業領域を広げようとする設計事務所とゼネコンのバトルが始まっている。