FCバルサは当初、新築(建て替え)も検討していた。ただ、建設中に試合を中止するわけにもいかず、新たな土地を探すとなるとバルセロナを離れる必要があった。それには当然多額の費用がかかる。構造はまだまだ使える状態であり、「歴史的な試合がこのスタジアムで開催された」というファンの愛着も強い。であれば改修という結論に至った。
「1957年新築時のモダンな屋根の形を裏返して、『ひさし』としてオリジナルデザインを生かしてくれた」。FCバルサの第3副会長であり改修プロジェクトの責任者のジョルディ・モイシュ氏は、日建設計のデザインの質にも納得していると語る。
改修工事の予算は全体的に厳しく、採算性は低い。スタジアムやアリーナ、駐車場や道路などを含めて全体にかかる費用は、約6億ユーロ(1ユーロ=120円で換算すると日本円で約720億円)と見積もっている。もともとスペインの建設費用は安い。
それでも日本人建築家でカンプ・ノウ改修のための設計コンペで日建設計チームを主導した同社執行役員の村尾忠彦氏は、「パイロットプロジェクトとして活用できる」と意気込む。カンプ・ノウは日建設計がこれまでの経験から得た知見を生かすと同時に、まだ完成していないにもかかわらず“広告塔”になってくれるからだ。