さらに自治体にとっては、水道局が事業者から納付金を受け取り、工業用水道設備の維持管理などに充てられる(山倉ダムの場合は年間2170万円<税抜き>×20年間)。そのため十分活用されていない貯水池の水面がお金を生む場所になるのだ。
一方でデメリットもある。その1つが強風への耐性だ。
アンカーを打ち込んでいるとはいえ、水面に浮かせているため、強風で大きな波が立てばパネルが流され互いにぶつかり破損する可能性がある。そのため波が立ちにくい湖面を選ぶ必要がある。
今回、京セラTCLソーラーが採用したのは、世界中で実績のあるシエル・テール(フランス)の高密度ポリエチレン製フロートシステムだった。
シエル・テール社によれば、2013年7月に連系された埼玉県桶川市の水上発電所は台風に数回見舞われたが、被害の記録はなかったという。だが、今回の台風15号では事故が起こってしまった。同社担当者は「今回のような火災事故は本件が初めてだ」との見解を示した。事情に詳しい業界関係者は、「フロートを係留するアンカーに何かしら問題があったのかもしれない」と推測する。
京セラの広報担当者は「原因については関係各所と連携して調査していきたい。その上で今後の対応について考えていく」としている。
実は水上太陽光発電に関しては、地上型のようなガイドラインが今のところ存在しない。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がガイドライン策定に向けて研究中のようだが、今のところ各社の技術水準に任せている面がある。
日本最大のプロジェクトで起こった火災事故。火元となったのは数十枚のパネルで、全体からすれば少ない。だが位置がずれてしまったり破損したりしている枚数は、現場の空撮を見る限りさらに多いことが予測される。
早急に原因を突き止めて、事故の再発を防止する対策をとらなければ、水上太陽光発電の設置に対して反対する自治体や地域住民が増えてしまうだろう。