大人気の『わけあって絶滅しました。』シリーズ。著者の丸山貴史さんによると、本書のなかでも特に“わけあり”な生きものは「飛べない鳥」だという。鳥は長い時間をかけて飛べるように進化したにもかかわらず、飛ばなくていい環境だと「あえて」飛べない身体に進化することがある。そんなちょっと不思議な「飛べない鳥」たちの悲喜こもごもについて話を伺った。
鳥は本当は飛びたくなんかない
――『続 わけあって絶滅しました。』を読ませていただきましたが、前作と違って生きものが時代順に紹介されていたり、地球の歴史がわかるコラムあったりと、進化と絶滅の歴史がとてもよくわかりました。「生きのびる難しさが体験できる」という巨大迷路もおもしろかったです!
今作は「絶滅」というものをより身近に感じてもらうため、「わけあって生きのびた」生きものを前作よりも多く入れました。また、新たに「わけあって繁栄した」生きものも取り上げています。
――2冊通して読むと、何となく、進化と絶滅の法則が見えてきた気がします。たとえば、離島で進化した動物って、あっけなく絶滅しやすくないですか?
そうですね、特に「鳥」は顕著です。かれらは飛べるので、(コウモリ以外の)哺乳類がたどり着けない離島にも分布を広げられます。ところが、敵のいない島に定着すると、だんだんと飛ばなくなり、そのうちに飛べなくなってしまうものも出てくるんです。飛ぶのには体を軽く保つ必要があるし、たくさんエネルギーも使うので、鳥たちは本当は飛びたくなんかないんだと思いますよ。我々だって、体重制限をしながら毎日走るなんてしんどいですよね。
わけあって飛べなくなったドードー
――なぜ天敵がいない離島に定着すると鳥は飛ばなくなってしまのですか?
じつは子孫を残す、という点においては、体が大きいほど有利なんです。たとえば、オスなら他のオスを押しのけて多くのメスと交尾できますし、メスも大きいほうがたくさんの卵を産めます。捕食者がおらず食べ物も豊富であれば飛べないことは不利ではないので、大型化しすぎて飛べなくなってしまうんですね。
飛べない鳥の中でも有名なのが、前作『わけあって絶滅しました。』でとりあげたドードーです。1865年に出版された『不思議の国のアリス』に、ジョン・テニエルがドードーのイラストを描いたことで、その存在が広く知られるようになり、今では絶滅動物の象徴的な存在になっています。
――ドードーは『不思議の国のアリス』のイメージが強いので、何となく架空の動物と勘違いしている人も多そうですね。
ドードーはアフリカ大陸の南東沖にあるマダガスカルの、さらに東に位置する「モーリシャス島」に生息していた鳥です。この島には大型の捕食者がいませんでした。というのも、モーリシャス島は火山活動によって生まれた島なので、アフリカ大陸やマダガスカルとは陸続きになったことがないからです。そんな島にたどり着くには、空を飛ぶか、波に流されてやって来るしかないので、モーリシャス島にはコウモリ以外の哺乳類が入ってこられなかったんです。
意外かもしれませんがドードーはハトの仲間なので、祖先はアフリカ大陸やマダガスカルから飛んできたのでしょう。そして、この島には幸か不幸か天敵がいなかった。そのため、どんどん大型化して飛べなくなってしまったんです。
――なるほど。飛べなくなったのには、ちゃんと合理的な理由があるんですね。