「鳥」を知ると、進化と絶滅の法則が見えてくる

――天敵がいない環境にいる鳥は、大型化して飛べなくなることがある。そういった進化と絶滅の法則が見えてくると面白いですね!

 もちろん適応の仕方はさまざまですから、すべての動物が大きくなる方向に進化するわけではありません。ただし野生動物の場合は、体が大きくなると単純に強くなるので、ほかの種類の動物と競合し勝ち抜いたものは、その環境で大きくなりやすいと言えます。

 たとえば、離島のような環境では、昆虫や鳥のような小型の動物は大型化しやすいですよね。その一方で、もともと大型の哺乳類は、狭い環境で暮らしていると逆に小型化することがあります。日本でも、島に生息するリュウキュウイノシシやヤクシカは、ニホンイノシシやニホンジカに比べて小さいですよね。

 ドードーの暮らしていたモーリシャス島には、やはり飛べなくなったモーリシャスクイナという鳥もいましたから、本当に敵がいなかったんでしょうね。そして、植生も豊かだったので、ドードーは栄養たっぷりの果実や球根などをたっぷり食べて、脂肪を蓄えることができたようです。ただしその分、動きは鈍くなっていったのでしょうが……。

人間が素手で捕まえられるほど「のろま」だった?

――ドードーは本の中で「のろますぎて絶滅」と紹介されています。

 はい。船乗りたちが道具を使わずに捕まえられたということからも、素早く逃げ回ることはできなかったのでしょうね。また、警戒心が薄く、人間が近づいても逃げなかったそうなので、実際以上にのろまな印象を与えたと思います。

 モーリシャス島に初めて上陸したのはポルトガル人で、1505年のこと。バスコ・ダ・ガマのインド到達が1498年ですから、いわゆる大航海時代の真っ盛りですね。当時の船旅は今とは比べものにならないくらい時間がかかったので、途中で何度も水や食料を補給しながら旅する必要がありました。そのため、モーリシャス島もインド洋航路の要衝として、船が寄港するようになったんです。

 しかしモーリシャス島には食用となる哺乳類がいない。必然的に、体が大きくて捕まえやすいドードーが狙われたのでしょう。しかもその場で捕まえて食べるだけでなく、1日に200羽も捕らえて塩漬けにして船に積み込んだり、時にはゲームとして棒で叩き殺したりすることもあったそうです。

――とても惨い話ですね……。

 ええ。しかも人間たちはドードーを自ら殺しただけでなく、島にブタやヤギを持ち込みました。森に放しておけば勝手に増えて、次に寄港したとき捕まえて食べられるからです。そしてさらに、船に便乗していたネズミたちも島に侵入しました。これらの哺乳類は恐ろしい捕食者ではありませんが、島の植物を食べることで環境を変化させたり、ドードーの卵を食べたりしたようなのです。

 人間による狩猟圧と、島の環境の激変という2つの要因により、ドードーは17世紀後半に絶滅してしまった、というわけです(最後の有力な目撃情報は1662年のもの)。

――ドードーの肉はそんなに美味しかったのでしょうか?

 それがどうも、ドードーの肉は煮込むと硬くなって、とても不味かったらしいんです。航海中は美味しいものなんて食べる機会のない下っ端の船乗りたちですら、ドードー肉の食事が続くとブチ切れたと言いますから、よっぽどですよね。

――そんな裏話まで……! ありがとうございます(笑)当時のエピソードを聞くと身近に感じられます! 今でも剥製や骨などは残っているのですか?

 絶滅したのが17世紀と古すぎるため、剥製は残っていません。当時はヨーロッパ大陸に剥製や生体が持ち込まれたそうですが、それらの死体もほとんどが捨てられてしまいました。唯一、イギリスのアシュモレアン博物館には皮膚まで残った標本が収蔵されていましたが、1755年に焼却処分されたと言われています。そして、そのときに焼却処分を免れた頭と片足の骨は、しばらくの間ドードーの唯一の標本となりました。

 ただしその後、モーリシャス島の沼地などから、化石化したドードーの骨が発見されており、1点だけですが全身骨格も見つかっています。

――貴重な標本を焼却処分とは!! ドードーの他にもペンギンやキーウィなど飛べない鳥は少なくありませんが、日本にもそういう進化をした鳥はいるのでしょうか?

 日本にもいますよ。『続 わけあって絶滅しました。』で紹介したヤンバルクイナは、沖縄島だけに生息する飛べない鳥です。

後編ではヤンバルクイナのお話について伺います。10月12日(土)公開!

わけあって絶滅しました。』 ダイヤモンド社 刊