シンプルだが、経営にとって大事なこと

 「このままでは給与が払えませんね。さなえ社長、どうしますか?」

 「えっと、銀行から借ります!」
 早苗が答えると、会場のあちらこちらから笑いが起こった。

 「借り入れは3期目からというルールなんだよね。他に方法はないかな?」
 早苗は資金繰り表を確認し、収入項目の一つに、目が留まった。

 「うっ、売ります!」
 早苗が力強く答えると、「おーっ!」と会場から喚声と温かい拍手が起こった。

 (そっか! 何のために一生懸命、製品をつくったのかを忘れちゃいけないよね。お客様に製品を届けなきゃ)

 早苗はシンプルだが、経営にとって大事なことに気がついた。

 最後の「意思決定」として、製品を1個30円で6個「販売」した。180円の売上だ(上図表(7))。

 増えたお金をもとに、期末の経費100円を払い、現金108円が残った(上図表(8))。

 手元にあるおもちゃのお金を数えると、資金繰り表の残高と一致した。

 最後に、在庫の棚卸だ。会社盤にある材料、仕掛品、製品のミニチュアの数と帳簿の数量を合わせて、第1期が終了した(下図表)。

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「皆さん、お疲れさまでした! 10分休憩をしたら、決算をやりましょう!」

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008 年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。