粉じん被害でも都は成分を調査せず
原因の材質変更の要請にも無回答

 さらに、想定外の問題も発生した。都議会共産党会派が専門家に依頼して市場で採取した粉じんを調査したところ、毒性の高い重金属のアンチモンが一般道路の8.1倍、カドミウムが4.8倍、亜鉛が5.5倍検出されたと今年3月に明らかになった。ターレのタイヤが走行によって削れたためと見られている。

 水産仲卸棟4階の駐車場で、各地に発送する水産物の積み込みを行う「茶屋」と呼ばれる場所で今年5月まで働いていた猿渡誠さんは豊洲へ移転して以降、咳が止まらなくなり、医師の勧めもあって仲卸業者の従業員に転職した。この場所は特に空気がこもりやすく、同様の訴えは多く出ているという。

 豊洲市場の勝海貴生監察担当課長は、「粉じんそのものの成分を調べていないが、市場内の空気を調べたところ建築物衛生法の基準を下回ったため問題ない。散水車による清掃もしている」と話す。

 粉じんは水産卸棟でも見つかり、前出の伊藤氏らが卸業界を代表して、粉じんの原因とみられるタイヤの材質変更等を都に求めているというが、「答えは出ていない」(伊藤氏)。水産仲卸棟の4階駐車場では現在も同様の状態が続いていると、猿渡さんは強調する。

 またこの4階では、通路の一部が7月ごろに閉鎖された。本編集部で以前に指摘したが、4階はターレが通る度に「震度3程度」(市場関係者)の揺れが生じていた場所だ。

通路の一部が閉鎖された水産仲卸棟の4階通路の一部が閉鎖された水産仲卸棟の4階 写真提供:市場関係者

 都は、ターレが建物の接続部分を走ることによる衝撃が原因としている。ただその対応だけのために建て替えるわけにもいかず、弥縫策を採るしかなかったようだ。豊洲市場には約2700億円の建設費用を投じた割には、あまりに初歩的な問題である。