アデルソン氏は、「カジノの帝王」であると同時に、トランプ大統領のスポンサーとしても有名だ。2016年の大統領選では選挙資金として2200万ドル(24億円)を寄付し、大統領就任式には500万ドル(5.5億円)を差し出した。

 カジノや不動産事業を通じてトランプ大統領と親密な関係にあり、再選を目指す来年の大統領選キャンペーンの重要人物だ。8月にもホワイトハウスで大統領と面談している。

 WSJはアデルソン氏が米中関係の改善をトランプに訴えた背景には、マカオで米国カジノ業者の営業権が危うくなっていることがある、と指摘している。

 マカオは1999年、ポルトガルから返還されたが、中国が任命する行政長官が統治している。観光客や資金を呼び込むため2002年にカジノ営業権を外資に開放。香港の華人企業が独占していたカジノ市場に、集客力のある米国資本が参入、ホテルや劇場を併設する統合型リゾート(IR)として急成長した。

 マカオに展開する米国企業は、アデルソン氏のラスべガス・サンズをはじめMGMリゾーツ・インターナショナル、ウィン・リゾーツの3社。この営業権が2022年に満期を迎える。

 当初は、実績をもとに自動更新と見られていたが、マカオ行政長官は2017年に、「再入札」の方針を打ち出した。

 トランプ政権になって米中関係が悪化したことが背景にある。

 米国は通信機器のファーウェイを市場から締め出し、中国製品に対する制裁関税実施などの強硬措置を相次いで実施してきた。これに対する中国の「報復」がマカオの利権に及ぶことをカジノ資本は警戒する。

 マカオで営業権を与えられているのは6社、うち3社は華人系資本。米国流の経営はすでに学び取っている。今年5月、マカオ行政庁は「再入札は実績に関係なくゼロベースで」との方針を改めて表明した。

 表向き「米国排除」には触れていないが、米国のカジノ資本は「経済戦争の人質」となってしまった。

「受け皿」は日本
安倍首相に「参入を要請」

 業界関係者によると、カジノの利益は、IRビジネスの中核になっているので、営業権が失効すれば、ホテルや劇場などIR全体が成り立たなくなり、全面撤退を余儀なくされるという。

 マカオはチャイナマネーを取り込み、いまや本場ラスベガスの4倍の利益を稼いでいる。世界最大のカジノ市場になったマカオの権益を失うことはカジノ資本にとって死活問題だ。