出生率と就業率の改善が貢献

 今回の財政検証では、いくつかの前提条件が大きく変わっています。まず改善しているのは出生率(一人の女性が15~49歳までに産む子供の数の平均)と就業率です。出生率の前提は、2014年は1.35でしたが、2019年は1.44と上昇しています。これは実際の出生率が2010年は1.39だったのに対して、2015年は1.45にまで改善したためです。また就業率の前提は、2014年では58.4%(2030年時の推計)でしたが、2019年では60.9%(2040年時の推計)となっていますが、これは直近の就業率が特に女性や高齢者で上昇している影響です。

 一方、2019年の財政検証では、経済の前提をより保守的に見ています。例えば、生産性を表す指標の一つである全要素生産性は、2014年が1.0~1.8%だったのが、2019年では0.9~1.3%となっていますし、実質賃金上昇率も2014年の1.3~2.3%から1.1~1.6%まで引き下げられています。あまりバラ色の経済前提を置くと批判にさらされるため、今回は保守的なものとする一方で、所得代替率のつじつまを合わせるために出生率や就業率の前提を改善させたのでは、といったうがった見方もできるのかもしれません。

出生率や就業率は改善するのか?

 というのも、上述の出生率と就業率の前提が楽観的だからです。出生率の過去の推移を見ると1980年以降は低下が続き、2005年に最低値の1.26をつけています。その後上昇し2015年には1.45まで回復したものの、その後また下がり2017年には1.43となっています。2015年に向けて出生率が回復したのは、人数の多い団塊ジュニア世代が出産適齢期に入っていたためだと考えられます。今後は団塊ジュニア世代も適齢期を過ぎ、人数の多い世代が次にいないことを考えれば出生率は下がることが想定されます。加えて、晩婚化や晩産化の傾向も続くと思われることから、出生率については今後低下することはあっても上昇することは考えにくいと思われます。実際、出生率の内訳を見ると、以前は20~34歳で出産する人たちが多かったのですが、今は25~39歳に移っており、着々と晩産化が進んでいます。このような現状に対する政策は十分とは言えない状況が続いており、前提の出生率1.44が長期的に実現するのか、厳しいと考えます。