状況を想定して「自分は何を話すか」を準備しておく

 状況に応じての「予習の大切さ」は、私がいったん仕事を離れ、二人の息子を連れて夫の海外転勤に伴った際にも痛感しました。インターナショナルスクールに通う子ども達の保護者として、先生や保護者との会話で、何を話して良いかわからず、会話を盛り上げることができなかったのです。

 長年外資系で英語を使って仕事をしていた私のプライドはもろくも崩れ、落ち込みました。私がこなしてきたスモールトークは、ビジネスの場面ばかりだったので、学校という状況では、うまくいかずに戸惑ってしまったのです。そこで今一度思い出したのが、外国人とのスモールトークの、状況を想定して自分は何を話すかを準備しておくことの大切さでした

 観察してみると、英語圏の先生は保護者を誰々のお母さんやお父さんと見る以前に、大人同士の何気ないスモールトークを大事にし、信頼関係を築こうとしているのがわかりました。子どもの先生だからと言って、特別な話題を考える必要はなく、相手を気遣うちょっとしたコメントや、簡単な近況報告で良かったのです。

 気ない会話から始めて、お互いの距離を縮めるという姿勢が何よりも大切でした。

 また、諸外国から来ている保護者とのスモールトークは、世の中の様々な出来事に対する健全な意見交換を伴うことが多くありました。

 子どもの習いごとや、家庭の愚痴などの話題で終わらず、多様な問題意識を持つ彼らとの会話には、自分の考えや意見が言えるように、普段からの準備が必要でした。

 むずかしい話だけでなく、彼らは自分たちの旅行先での体験など、スモールトークにふさわしい話題を、わかりやすく楽しく話すことに長けていました。

 大事なのは英語力を磨くことだけではなく、日頃から問題意識を持って、自分の意見を言えるようにすること、自分の経験をわかりやすく、ときにはユーモアを交えながら伝える表現を身につけることだと、改めて痛感しました。