プラズマ撤退時に比べて
欠如する危機感

 とはいえ、今回のIR DAYが拍子抜けする内容に終わった面は否めない。なぜなら、目標数値を出し切れなかった4カンパニーでも、てこ入れするべき事業はずいぶん前からとっくにあぶり出されていたはずだからだ。

 構造改革、構造転換が急務となっている事業の代表例は、家電製品等を扱うアプライアンス社のテレビ事業、電子部品等を扱うインダストリアルソリューションズ社の半導体事業、B to Bソリューション事業を展開するコネクティッドソリューションズ社の現場プロセス事業(現場の効率化を請け負う事業)であろう。

 パナソニックにはもともと、約束できない数字は外に出さない方針がある。さらに過去には、「掲げた数値が独り歩きした例」(パナソニック社員)もあるという。

 しかし“目標数値なき計画”は、改革着手の遅さと、改革をやり切るための切迫感が社内でいかに欠如しているかを思わせる。

「パナソニックは、事業の取捨選択ができたらものすごく強くなれる」。かねてパナソニック幹部は異口同音に自信のほどを語っているが、「競合他社に比べて決断が遅過ぎる」(金融業界関係者)との声が絶えないのも事実だ。

 実際に、中国・韓国勢との競争激化が長らく続いていた液晶パネル事業にしても、完全撤退を発表できたのはつい先日、11月21日のことである。

 パナソニックは、プラズマテレビ事業からの撤退などによって、もはや巨額赤字にあえぐことはなくなった。だが逆に言えば、そのくらいの衝撃がないからからこそ、社内で危機感を醸成することが難しく、各カンパニーが“慢性疲労”を放置し続けている。

 確実に成長し続けるために、しがらみを断ち切った変革のための冷徹な経営判断が必要な時だ。

訂正 記事初出時、第16段落にて「約束できない数字しか外に出さない方針がある。」とありましたが、現状本文のように修正させていただきました。(2019年12月13日 18:20 ダイヤモンド編集部)