その2社とは、電設資材や住設建材といった旧パナソニック電工の事業を展開するライフソリューションズ社と、中国を中心とするアジア圏に家電製品と住宅設備を組み合わせた「くらし空間の提案」などを行う中国・北東アジア社である。

 結論から言えば、目標数値を掲げないカンパニーがあったのは、「未発表の売却、買収案件を抱えており、短期間で数字が変わる可能性があるから」といった戦略的な意図があってのことではないという。

 津賀一宏・パナソニック社長は、「今回の中期戦略では、数字が作れなかった」のだと率直に打ち明ける。パナソニックは今、“目論見外れ”に苦しんでいるのだ。

 前中期戦略では、米テスラ向けの電池事業をはじめとする車載事業で大きく成長する絵姿を描いていた。だからこそ、車載以外の既存事業の中で赤字が出る事業があっても、パナソニック全体で安定的に利益が出ればそれでよしとしていた。

 ところが、だ。ふたを開けてみれば、車載事業は売上高には貢献したものの、利益がさっぱり出なかった。前中期戦略の前提となる成長ドライバーにはなり得なかったわけである。

 新中期戦略ではこの厳しい現実に向き合い、車載事業に頼らない利益の増大方法を急ピッチで考えざるを得なくなっている。「たまに黒字が出るから」といって放置していた事業の整理や、伸びしろのない事業からの撤退、ビジネスモデルの転換などの構造改革は、待ったなしの情勢だ。

 IR DAYの発表を延期した半年間でも津賀社長と各カンパニー長は、カンパニーの戦略を抜本的に練り直したというより、構造改革を含む変革への取り組みスピードなどについてすり合わせを行っていたもようだ。

「(3年先の)次の中期戦略までに、数字で成長性と収益性を語れるようにする」(津賀社長)。パナソニックはまさしく、正念場を迎えている。