格差はやがて社会の分断、暴動、革命に発展

 格差の拡大は、人々の倫理観の低下を招き、犯罪、暴力やハラスメント事件を増やし、ストレスと心の病を持つ人を増やします。それに伴い、社会全体が他人を信用しない、冷たくギスギスしたものになることは前述したとおりです。また、格差が人の幸福感を低くするという研究もあります(Alesina et al 2004, Tachibanaki & Sakoda 2016等) 。

 さらに格差が、社会の分断、暴動や革命を引き起こすことを示す歴史上の事実は多くあります。例えばフランス革命です。国民のわずか2%の権力者(王室家系、高僧、貴族)が国の富と権力を握り続けたあげくに起きた、社会のあり方を大きく転換させた歴史的な出来事です。

 また所得格差が異なる宗教、民族、地域アイデンティティ、政治的イデオロギーと重なるとさらに厄介です。紛争が起きる可能性、そのパワーや社会へのインパクトが、一気に高まるからです(オスロ国際平和研究所調査2017)。

 例えば、今の香港はその典型例です。一昨年には過去45年間で格差が最大に広がっています(所得格差を表す指標の1つジニ係数が、アメリカの0.411を超え0.539まで拡大)。これに、地域アイデンティティ(香港人と中国人)、政治的イデオロギー(自由民主主義と一党独裁社会主義)という2つの要素が重なるため、問題が根深いのです。

 この点では、日本も他人事ではいられません。個人間の格差は前述の通り短期間で拡がっています。また、「大都市圏と地方」、「正規と非正規雇用者」などグループ間格差も顕著になっています。もしこれが日本以外の国ならば、暴動や革命が起きてもおかしくない状態です。今こそ、こうした格差と社会の劣化を客観的かつ真剣に捉え、国民的議論を起こすべきではないでしょうか。なぜならば、民主主義社会における変革は、国民的議論と意思表示が出発点になるからです。