貸し渋りに苦しんでいるのは中小企業ばかりではない。名前を聞けば誰でも知っている大企業ですら資金繰りの不安を抱えている。「相手は絶対につぶれない優良企業」なのに、なぜ大手銀行は貸せないのか。コマーシャルペーパー(CP)の市場崩壊で始まったパニックの深層に迫った。
「うちに来ている融資要請だけで、地銀が2つできますよ」(大手銀行首脳)
今、それほど巨額の融資申し込みが大手銀行に殺到している。本誌調査によれば、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほコーポレート銀行、みずほ銀行の4行だけでも合計20兆円を超えている模様だ。
主役は大企業、それも超優良企業である。下の表を見てほしい。短期借入金が多い上場企業一覧で、トヨタ自動車、三菱商事、オリックス、東芝といった日本を代表する一流企業がずらりと顔を並べる。こうした大企業が資金確保のために大手銀行の門前に市をなしているというのだから穏やかではない。
理由は単純である。9月のリーマンショックによって、コマーシャルペーパー(CP)、社債といった直接調達市場が崩壊しているからだ。
今年11月のCP残高(事業会社発行ベース)は13兆円弱。4月に比べて約3兆円も減った。一般事業債の月別発行額も同様で、4月の約1兆2000億円が11月には約3000億円にまで落ち込んでいる。機関投資家は、優良企業のCP、社債ですら買わなくなってしまった。
市場から短期資金を調達していた大企業は、やむなく銀行に駆け込んだ。とりわけ、米国子会社で自動車ローンを展開している大手自動車メーカーは、ドル資金の手当てに追われた。サブプライム問題で瀕死の欧米銀行からは借りるに借りられず、頼みの綱は邦銀しかなかった。