アロマセラピストとネイルアーティスト
―かけ算の妙で仕事をつくれ
あなたにもこのように仕事を組みあわせて、オリジナルな仕事を生み出すことができる。アロマセラピストとネイルアーティストがいい例だ。
いずれも私が会社に入った頃にはなかった仕事である。
アロマ(香り)をやっている人は以前からいた。日本には「香道」があるくらいだ。一方、セラピー(癒やし)をやっている人もいた。臨床心理士のような心理学系の仕事だけでなく、お坊さんや神父の仕事もそうだろうし、指圧や鍼灸師もそうだろう。
ところが、これを合体させて、アロマ(香り)とセラピー(癒やし)をかけ算し、私はアロマセラピーを仕事とする「アロマセラピスト」だと「旗」を掲げた人は(誰だか知らないが)初めてだった。
その瞬間から、アロマセラピーの世界に渦が巻き、資格が生まれ、教科書ができ、研修会が開かれ、独立して起業する人が続出し、お金の流れが決まった。今はもうブームは去ったが、この仕事で食っている人はいる。
ネイルアーティストもそうだ。ネイルにマニキュアを塗るのは一般的だった。しかし、それをアートとかけ算して「ネイルアーティスト」の旗を掲げ、お金の取れる技術にした人がいる。
今後も、ますます複雑化する成熟社会には「セラピー(癒やし)」や「アート(芸術性)」は重要だから、それぞれの言葉に、別の世界をかけ算する仕事は生み出され続けるだろう。
あなたの使う枕とセラピーをかけあわせて安眠を約束する「枕・セラピスト」や、食べるサラダとセラピーをかけあわせて健康に貢献する「サラダ・セラピスト」。あなたの家の便器をアートして気分を一新させる「便器・アーティスト」や、お酒の瓶だけに絞ってそのボトルをアートする「酒瓶・アーティスト」などなど……。
ギリシャで昔から医療技術の一つとして施術されてきた「ストレート・カイロプラクティック」とセラピーをかけあわせた医師はもういるし、鉛筆の芯の先端を削ってサグラダファミリアや象やダース・ベイダーの姿を彫刻する「鉛筆の芯アーティスト」も存在する。
ようは、かけ算の妙なのである。
あなたの人生において、「キャリアの大三角形」を描いて100万人に1人の希少性をゲットする際にも、このかけ算のセンスによって希少性の大きさが決まってくる。
大きな三角形が描ければ希少性は高まるから、とりわけ三歩目のジャンプによって、あなた自身の付加価値が決まると言っても過言ではない。
会社で昇進して、営業マンと営業係長と営業所長を経験しただけでは、希少性は高まらないから、付加価値もそれほどつかない。
そのまま部長にまで昇進しても、会社のブランドが剝がれた途端に周囲から見放されるリスクを背負うことになる。
そうならないためには、早く「個人」として目覚め、自分に付加価値がつくように、外でのマーケットバリュー(市場価値)を気にしながら真摯にキャリアのかけ算をしていく必要がある。