もう一点の隙は、選出された言葉が“流行語”あるいは“新語”と呼ぶにしても、やはりパンチが足りないように思うからである。

 ノミネート、および授賞に至る語にはちょっとした傾向がある。本当に流行った言葉より、その年に起きたイベントや世相をうかがわせる語が選ばれやすいのである。

 だから「新語・流行語大賞」が名前を変えて「世相ワード大賞」や「時事用語大賞」か何かになれば、賞の名前が示すものと受賞する語の実態との乖離がだいぶ減って説得力が増すであろう。それなら「今年の漢字」くらいには世間を納得させる(あるいは世間を寛容にさせることで受け入れてもらえる)ことができるはずである。

 しかし同賞は1984年創始以来、マイナーチェンジによる紆余曲折を経てはきたものの「新語」「流行語」の既定路線は堅守している。

 すると、ここまで来ると「炎上商法の類か、何かなのか」などという邪推も生まれてくるのである。確かに胸に手を当ててみると、「今年の新語・流行語大賞は実際の流行りからどれだけずれてくるのだろう」と意地の悪い気持ちで楽しみにしている部分は、筆者の中にあった。授賞された語が実際の流行りからずれるほど世間は叩くに違いないが、叩かれれば叩かれるほど話題性は大きくなるのである。

 これを主催者が狙ってやっているのであれば大したものである。

 ところで、新語・流行語大賞には有意義な活用方法もある。試しに過去の新語・流行語大賞の授賞語を調べてみるとよろしい。その年に何があったのかをなんとなく思い出すことができるはずである。「この言葉、流行ってなかったけど、そういえばあったな」と懐かしい気分になれるので、昔を振り返りたい人におすすめの使い方である。

漂う政治臭
作為か偶然か

 さて、これだけ腐しておいて紹介するのもなんだが、「ユーキャン新語・流行語大賞」は自由国民社という出版社が主催していて、同社刊行の『現代用語の基礎知識』に収録された語の中から事務局がノミネートする語を選出し、さらにその中から選考委員会が授賞に至る語を決める。2019年の選考委員は(以下敬称略)姜尚中、金田一秀穂、辛酸なめ子、俵万智、室井滋、やくみつる、大塚陽子の7人。

 今年“年間大賞”となった「ONE TEAM」の語について、これはまあまあ、“大人の事情”を忖度(そんたく)しても納得がいくものであった。ラグビーワールドカップにおいて快進撃で日本中を魅了した日本代表、彼らをジェイミー・ジョセフヘッドコーチが「ONE TEAM」をテーマに率いたとのことである。

 言葉としての「ONE TEAM」は全く流行っていなかったと思うが、ラグビーワールドカップはおおいに盛り上がったし、「一丸となって事に当たり成果を上げること」を連想させるこの語は非常にポジティブで、これらの点に鑑みて、年間大賞授賞は「妥当性がある」と思われたのだった。

 しかし新語・流行語大賞の公式サイトを閲覧していると興味深い記述を目にした。

 サイトでは授賞に至った語と、それに関するコメントが書かれているのだが、まずページの一番上段に来ている年間大賞「ONE TEAM」についてのコメントである。結びの部分にこうあった。