体罰を禁止しても
非行に走る子どもは増えない

 そのような意味では、「体罰禁止」に反対される方たちの戸惑いや憤りはよくわかる。我が子をアムロのような「甘ったれ」にしたくない、という親心がそうさせているのだろう。

 しかし、そこまでの心配には及ばないのではないか。「体罰禁止」になっても、ほとんどの子どもは人の道を外れることなくスクスクと育つ。体罰でしつけられないがゆえに、人を傷つけたり万引きを繰り返したりというような問題行動を起こす子どもがドカンと増えるなんてことはないはずだ。

 なぜそんなことが断言できるのかというと、「体罰の法的全面禁止」は既に世界58カ国で支持されており、それらの国では、日本の親たちが心配するような問題は起きていないからだ。

 日本では「体罰禁止」と聞くと、「理想論だ」とか「親の大変さをわかっていない」などとボロカスだが、世界には親から体罰を受けることなく、育てられて立派な大人になった人たちがたくさんいる。

 もちろん、ハナからそうだったわけではない。

 先ほど「日本では」という言い方をしたが、「悪い子どもに手をあげてこそ良い親」という考え方は、多かれ少なかれ、どの国にも存在していた。しかし、今の日本のように、「しつけ」名目で我が子を血祭りにあげる親が後を絶たないということで、法制化に乗り出したのである。

 口火を切ったのは、「やはり」というか北欧・スウェーデンだ。日本では親に殴られたことのないアムロが「甘ったれ」だと視聴者をイラつかせていたまさにその頃、以下のような「子どもと親法6章1条」が制定されたのである。

「子どもはケア、安全および良質な養育に対する権利を有する。子どもは、その人格および個性を尊重して扱われ、体罰または他のいかなる屈辱的な扱いも受けない」(NPO法人 子どもすこやかサポートネットHPより)

 これをきっかけに、同国では「体罰をする親」が劇的に減った。スウェーデン児童福祉基金およびカールスタット大学の調査では、1960年代に体罰を行う親は90%以上だったが、80年代には30%強、2000年代になると10%程度まで減少している。

 このスウェーデンの世界初の取り組みは、当初はそこまで国際社会で注目を集めなかったが、2000年代に入ると欧州へ広がり、2010年代に導入する国が急増。アフリカ諸国、ニュージーランド、南アメリカ、モンゴル、ネパールなども加わって、2019年についに58カ国になった。