体罰を野放しにすると
命を落とす子が続出

 では、なぜ日本の親たちが「愚策」と切り捨てる「体罰全面禁止」を受け入れる国がここにきて急増しているのか。

 この国際的なトレンドを否定的に見る人は、「そんなもん、プラスチックストロー廃止とかと一緒で、環境やら人権やらに対して意識の高い国だってアピールができるからでしょ」と、一種のパフォーマンスのように受け取っているかもしれないが、そうではない。

 親の「良心」に任せてこの問題を放置していると、凄まじい勢いで子どもが殺されていくため、藁にもすがるような思いで導入しているのだ。その代表がフランスである。実はあまりそのようなイメージがないかもしれないが、かの国も、日本に負けず劣らずの「児童虐待大国」なのだ。

 フランス政府が2018年に発表した統計によれば、1週間に1人から2人の子どもが親の虐待で命を落としている計算になるほどで、虐待の通報窓口にかかってくる電話の数は、なんと年間約46万6000件。1日平均だと1300件近くに上るという。

 ちなみに、日本全国212カ所の児童相談所が児童虐待相談として対応した件数は15万9850件(平成30年度の速報値)。過去最多を記録したが、フランスは日本の約3倍である。一概に比較できるものではないが、フランスでもかなり深刻な社会問題だということがうかがえよう。

 なぜこうなってしまったのか。NHKの「BS1ワールドウオッチング」の「深刻化する児童虐待 試行錯誤するフランス」(2019年4月5日)によれば、こんな理由があるという。

《もともとフランスは、児童虐待の取り組み自体は歴史がある国で、100年以上前から法整備が進められてきた。その一方で、子どもへの体罰に関しては、教育やしつけという意識があり、なかなか議論が進まなかった》

「海外では子どもの体罰が禁止されている」という話を聞くと、「ここは日本だ!日本には日本人ならではの教育方法がある!」とかキレる人たちが必ず出てくるが、似たような考えから「体罰」を容認してきたのは、日本に限ったことではないということだ。

 どの国もそれぞれの文化に合わせた教育方法を持っており、程度の差はあるものの「言うことを聞かない子どもには暴力でお仕置きを」という思想があって、それをつい最近まで子育ての現場で受け継いできたのである。

 しかし、そういう伝統だ、教育だ、と悠長なことを言ってられないほど、「しつけという名の虐待」が増えてきたという現実がある。このまま親に「愛情のある暴力」を恣意的に運用させる自由を与えていたら、屍の山ができるだけだということで、すがる思いで「体罰全面禁止」に舵を切るのだ。