準備もせず賢ぶるやつは最悪

 グーグルの取締役会では、ビルは業務報告に詳細な「ハイライト」と「ローライト」を含めるよう、いつもエリックに勧めた。「これがうまくいったことや満足できること」で、「これがあまりうまくいかなかったこと」だという報告だ。

 ハイライトをまとめるのはいつでもわけなくできる。チームは成功事例を見栄えよく見せ、取締役会にアピールするのが大好きだからだ。だがローライトはそういうわけにはいかない。思い通りにいっていない分野を率直に認めさせるには、多少の促しが必要な場合がある。

 じっさいエリックは、率直さが足りないという理由で、ローライトの草稿を突き返すことがよくあった。エリックは取締役会がよい知らせと悪い知らせの両方を知ることができるように、偽りのないローライトを含めるよう努めた。

 信頼性の高い真のローライトを作成するには、収益成長やプロダクトの限界、従業員の離職、イノベーションの停滞などに関する率直な報告を含める必要がある。

 2002年の「ハーバード・ビジネス・レビュー」の論文によれば、「敬意と信頼、率直さの好循環」が、「すぐれた取締役会を有効に機能させる」カギの一つだという。こうした率直な姿勢を通して、透明性が高く誠実な雰囲気が取締役会に醸成され、やがてそれが会社全体に浸透するのだ。

 取締役会に対して正直な会社は、みずからに対しても正直だ。悪い知らせを正直に公表してもかまわないどころか、そうすることを社員は期待されている。

 何がローライトかを判断するのは重要な仕事なので、財務やコミュニケーションを担うサポート部門にまかせきりにせず、実際にその事業を運営する責任者が行うべきだ。グーグルではプロダクトマネジャーがこの任に当たった。

 ただし……私たちは会合に先立って取締役に送付する資料一式には、ハイライトとローライトは含めていない。それをやったら取締役たちはローライトに気を取られすぎて、会議でいきなりそこを突いてくるからだ。

 取締役にふさわしいのはどんな人か? 会社のことを心から気にかけ、聡明で、事業に関する専門的知見を持ち、CEOに協力し支援したいと本心から思っている人物だ。

 ディック・コストロがツイッターのCEOに就任したとき、取締役会のメンバーは彼のほか数人のベンチャーキャピタリストと創業メンバーだけだった。ディックはビルの助けを借りてそれを変え、事業運営の実務に精通した人たちを取締役会に迎え入れた。ビルは、頼りにできる実務家がいたほうがいいと勧めたのだ。

 ビルは悪い取締役についても具体的なイメージを持っていた。

「それは、ただふらっと来て、自分がいちばん賢いと見せようとして喋りすぎるやつだ」

(本原稿は、エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著『1兆ドルコーチ──シリコバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』〈櫻井祐子訳〉からの抜粋です)