五輪の真夏対応はぶっつけ本番
暑さ、そして寒さへ対策は?

 新国立競技場は、五輪・パラリンピック前に実際に観客が入る4つのイベント開催が決まっている。12月21日に行われるスポーツ・音楽・文化のオープニングイベントと、20年の元日に開催する第99回全日本サッカー選手権大会(天皇杯)決勝、5月に2回ある陸上大会だ。天皇杯以降は競技運営と大会運営の能力を高めるためのテストイベントに指定されているが、開催は冬から初夏にかけてで、五輪の真夏の対応はぶっつけ本番となる。

 暑さ対策は、客席の頭上に設置された扇風機(気流創出ファン)と、ミスト冷却設備のほか、主に自然の風が頼りだ。風によって会場内の気温を下げるべく、設計が工夫されている。

新国立競技場「空の杜」5階には四季折々の草花が囲む「空の杜」がある。上部には木目がプリントされたアルミ製ルーバーが見える Photo by T.M.

 例えば、天井とスタジアム側面の間には、スタジアム一周をぐるりとアルミ製の細長い板(ルーバー)が内側に向かって斜めに設置されている。ルーバーの板の間には隙間が空いていて、ここを風が通ってスタジアム中央や客席に抜ける設計になっている。隙間の間隔は、夏に風が吹いてくる南東方向が最も狭くなっており、風をスタジアムの下層に届ける。対岸の北西の隙間は最も広くなっており、風を上空に逃がす。

 また、各階の側面には壁はあるものの、密閉していないため風の通り道ができる。こうして空気の流れをコントロールしているのだ。ただ、内部の温度を具体的に何度下げる効果があるのか、数値では検証されていない。

 寒さについては対策らしきものが見当たらなかった。観客席入り口にガラス扉があるものの、会場内は吹きさらし。内覧会当日は晴天だったが、風が通ると寒さが身に染みた。

 五輪を乗り越えたとして、大会後に過去の遺物とならずに市民から親しまれ、活躍するスタジアムになるための課題は残っている。