「旧国立競技場を施工したのは大成。会社の先輩が建てた建物の後継の施工を他のゼネコンに譲り渡すなんてことは受け入れられないから、なにがなんでも大成は受注を逃さなかったはず」「歴史に残るシンボリックな構造物こそ、利益がほとんど出なくても手掛けたいのがゼネコンの性(さが)」。

 そうした心情はさておき、この一大工事で大成はもうかったのだろうか。

新国立競技場外観新国立競技場外観 Photo by T.M.

最終的にかかった工事費は1529億円
天井を見上げるとむき出しの配管

 デザインのやり直しが15年に決まったため、完成までの工事期間は36カ月間という限られたものだった。

 大成JVは、施工しやすい設計を計画するデザインビルト方式を採用したほか、同じパーツを繰り返し施工することで職人の習熟度を上げるなど工期を短縮する工夫を凝らし、工期通り19年11月中に完成し、月末に発注者へと引き渡しを完了した。

 労務費・資材費の高騰する中、同時期に再開発が多数集中して建設需要が膨らんだことなども工事費の増大に影響したものの、最終的にかかった工事費は1529億円。工事費予算の上限を21億円下回るものとなった。

 地図に残るだけでなく、“金の残る仕事”だったとみられる。

新国立競技場天井にはむき出しの配管が目立つ Photo by T.M.

 会場内で天井を見上げると、天板が張られず配管がむき出しだ。工事を発注した日本スポーツ振興センターの高橋武男・新国立競技場設置本部総括役は、「コストをかけるところ、かけない所にメリハリを利かせている」と説明する。見てくれは悪いが、むき出しのほうが資材や施工のコストが安く、メンテナンスもやりやすいというわけだ。