最初から研究の道を志していたわけではなかった
本村:そもそも、僕はジャーナリストになりたかったんです。それで大学の新聞部に入ったんだけど、新聞って当たり前だけど、どんどん扱うテーマが変わるじゃない。でも、自分はひとつのテーマをどんどん深めていきたいタイプだったことに気がついた。そこでジャーナリズムからアカデミズムに舵を切ろうと思ったわけだけど、さて何をやるか。で、ラテン語を使わないのはもったいないということで、古代ローマのことを勉強しはじめた。そこからどんどん、研究への道へ入っていきました。
本郷:僕も、もとは坊主になりたかったんですよ。
本村:坊主に!
本郷:ええ、だから中学生のときには仏教書をいっぱい読んでいた。だけど、高校生になったころ、どうやら住職になるのにはめちゃくちゃお金がかかるらしいことを知って。だから坊主をやめて、結局、何になるか全然わからない状態で大学に入ったんです。そこで一番選択肢が多そうな文学部に入って……はっと気がついたら、研究をしていたという……。
――はっと気がついたら?
本郷:ははは。本村先生の場合、ラテン語という専門知識があったわけだけど、僕はふつうの歴史好きでした。司馬遼太郎や海音寺潮五郎の歴史小説とか、大河ドラマとか、そういうものが大好きだったわけ。だから学問としての「歴史学」の決まりとか、作法を身につけるのは、逆にすごく大変でした。
本村:フィクションとノンフィクションの違いとか?
本郷:はい、でも根がフィクション好きだったぶん、ノンフィクションときっちり分けることの重要性をすごく意識しました。だから史料そのものを扱う史料編纂所に来ちゃったのかもしれない。