ループス・コミュニケーションズの福田浩至氏は、「情報技術に知見のある人々の嘲笑を買っただけでなく、一般消費者には不安を与える対応となった。自社だけでなく、スマホ決済に関わる業界全体にも、好ましくない印象を与えてしまった」と指摘する。
また、この会見の問題点として「登壇者での“役割分担”をせず、トップが何から何まで答えすぎたこと」を挙げたのは、ピーアール・ジャパンの中村峰介氏。当時経営トップだった小林氏は、日本長期信用銀行(現新生銀行)、日本興業銀行(現みずほ銀行)を経てセブン-イレブン・ジャパンに入社しており、いわばファイナンス分野のプロ。一方、セブン・ペイの社長には昨年就任したばかりで、デジタル領域の知見は十分ではなかったかもしれない。
そうした部分を正確にカバーするために、会見ではグループのデジタル分野の責任者2名が同席していた。しかし、小林氏はこうした人材を活用せず、「不得手な質問もすべて自力で対処しようとした」(中村氏)ために、「スマホ決済運営会社のトップがデジタルを知らない」ことを印象付けるような発言が飛び出してしまったというわけだ。
「社長は『利用者の個人情報を守るため最善を尽くしてきたつもり』という企業姿勢を繰り返し述べつつ、技術的な詳細は〇〇から回答を……という具合に、回答者を振り分けるべきだった」(中村氏)
プロが選ぶ謝罪会見ワースト3位
かんぽ「不適切販売問題」
ワースト3位となったのは、日本郵便とかんぽ生命保険によって、保険料の二重払い契約など顧客に不利益をもたらす「不適切な販売」があった問題。今月18日に発表された特別調査委員会の調査報告では、法令・社内規則違反が疑われる契約は1万2836件に上ることが分かった。
問題自体の深刻さもさることながら、度重なる経営陣の会見ではその態度にも疑問の声が上がった。専門家からは、「経営者が下に責任を押し付けている感じがあった」(関西大学社会安全学部・亀井克之氏)、「たたかれることを想定できず、仕方なく説明してやっている、といった姿勢が表面化している」(アズソリューションズ・佐々木政幸氏)などのコメントが相次いだ。
過度なノルマが指摘されていた営業体制などについては、「問題改善に向け近年努力をしてきた」「頑張っている最中」という姿勢をアピールする一方で、事態を把握した時期やこれほどの問題に至った根本的な要因については曖昧な回答が目立った。加えて、幹部の発言から見解の相違が明らかになるなど、組織内の足並みの乱れもあらわになり、さらに両社を信頼回復の道から遠ざけることとなった。