タレブが考える「英雄」とは?

 タレブはリバタリアンだが、それを超える局面もある。それが、「他人のために身銭を切る」者への称賛だ。通常、リバタリアンはそのようなお節介など意に介さないのが一般的だが、タレブは他人のために身銭を切る行為を英雄的だと考えている。このあたりはタレブの面白さであり、彼の魅力になっているのではないかと私は思う。

なぜタレブは最新作でこれほど激怒しているのか?
『身銭を切れ』93ページより引用。拡大画像はこちら

「真っ当さ」とは究極的には何なのか

 タレブの意見のなかには、経済学の専門家として首肯しかねるところもある。しかし、私はタレブの著書はもっと広く読まれるべきだと思っている。

 それは、タレブほど「『真っ当さ』とは何か」をずっと探求している人はいないと思うからだ。思いのほか複雑で、移ろいやすく、人によっても多様でありうる「真っ当さ」に関して正面から全力で向き合っている、そんな“身銭を切った”著作家の意見を、タレブが言うところの「ペテン師」が跋扈する今の世の中で読めるのは、本当に貴重な体験だと私は思う。