野田政権の成長戦略である「日本再生戦略」が7月31日に閣議決定されました。オリンピックの報道がメディアの大半を占める中で酷評は免れていますが、その出来の悪さは半端ではありません。同時に、この成長戦略は今の政府の2つの深刻な問題点を如実に示しているのではないでしょうか。それは政治の官僚依存の深刻化と、官僚の質の深刻なまでの低下です。
官僚依存の深刻化
まず官僚依存の深刻化という点について見てみましょう。「日本再生戦略」をしっかりと読み込んでみますと、政権の官僚依存がここまでひどくなったのかと思わざるを得ない点があまりに多く発見できます。
例えば、マクロ政策の最優先課題であるデフレ脱却に関しては、デフレの原因について「需給ギャップの存在、企業や消費者の成長期待の低下、デフレ予想の固定化といった要因がある」と記述するのみで、デフレの主因である日銀の金融緩和不足には何も言及されていません。
その延長で、デフレ脱却に向けた政府の対応でも、肝心の金融緩和については“日銀は頑張っています、政府も日銀の頑張りを期待します”という趣旨の代わり映えしない表現のみで、あとはどうでもいいことばかりが延々と記述されています。日銀の金融緩和が欧米と比べて全然不十分であることを考えると、これでは、政府の美辞麗句とは裏腹にデフレ脱却は望めません。
なぜこのようなインパクトのない中身になってしまうかと言うと、「日本再生戦略」の内容の調整を官僚に丸投げし、政治の側がしっかりとチェックしなかったからに他なりません。関係省庁間での文言調整の結果を政治が丸呑みしているから、おそらく日銀の意向でデフレの原因に金融緩和不足が入らず、具体策でも現状の金融政策の是認で終わってしまったとしか考えられません。
この官僚丸投げの弊害は、個別分野の成長戦略にも明確に現れています。政策内容が異常なまでにアンバランスなのです。
例えば、重点分野の「ライフ成長戦略」を見ると、“医療・介護・健康関連産業を真に日本の成長産業とする”と啖呵を切ってはいるのですが、そのための具体策を見ると、これまで規制改革会議や経済財政諮問会議などで何度となく指摘されてきた医療や福祉の規制改革の具体策は皆無です。“関連する規制・制度改革を進める”という抽象的な一言があるだけです。