地に落ちた英雄、国際的おたずね者に

 ただ、日本人にとって受け入れにくい卑怯(ひきょう)な行為に映るようだ。

 事実、これまでゴーン被告を擁護していた人権派とみられるネットユーザーらからも「がっかりした」「自分の主張を通してほしかった」など落胆の声が漏れた。

 全面的な無罪を主張していた弁護団も「報道以外のことは承知していない」と繰り返し、ゴーン被告への連絡を試みた上で、本人の意向を確認した後、弁護人を辞任する方針のようだ。

 東京地検の斎藤隆博次席検事は5日、「逃亡は自らの犯罪に対する刑罰から逃れようとしたにすぎず、行為を正当化させる余地はない」とコメント。

 森雅子法相は6日の記者会見で「適正な手続きを経ず、不正な手段で出国した不法出国の犯罪だ」と指弾。レバノンとは犯罪人引渡条約がないため、身柄引き渡しは国際刑事警察機構(ICPO)を通じて手配したと説明したが、直接交渉するかどうかは「相手国の国内法制に基づき慎重に検討する」と述べるにとどめた。

 ゴーン被告の両親はレバノン人で、同国では「ビジネスの成功者」として“英雄”だった。しかし、昨年秋から汚職や腐敗に憤るデモが相次ぎ、ゴーン被告にも「不正が疑われる人物」として冷たい目が向けられ始めているという。

 ゴーン被告を巡っては、フランス当局もすでに捜査に着手。既にレバノンでも英雄の威光は地に落ち、政府にかくまわれた国際的な“おたずね者”でしかないとされる。

確実に有罪だったかは疑問の声も

 それでは、ゴーン被告は有罪間違いなしだったのだろうか。

 ゴーン被告は報酬の一部を有価証券報告書に記載しなかったとして金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪と、私的な投資の損失を日産に付け替えたり、日産の資産を自身が実質的に保有する投資会社に送金させたりしたなどとして会社法違反(特別背任)の罪で起訴された。

 証券取引等監視委員会(日本版SEC)に出向した経験がある公認会計士は「絶対の自信があったはずだ、とは断言できない」と話す。

 というのは、会計士は「特別背任は専門外で分からないが、これまで虚偽記載で立件されたのはライブドア事件など『粉飾決算』が主で、報酬の虚偽記載が刑事罰に問われた例はないからだ」と説明する。