昨年5月に発表した中期経営計画は、3年間で約20%の増益を図る内容となっている。国内の低金利環境の長期化で、収益ドライバーは海外部門にならざるを得ず、増益部分の7割を担う。しかも、そのうちの半分をたたき出すミッションを負うのが米国のユニオンバンクや、タイやインドネシア、フィリピンなどのアジアの出資先銀行だ。
MUFGは邦銀の中で先頭を切ってグローバル展開を進めてきた。北米とアジアに張り巡らせた環太平洋フランチャイズは完成形に近付いた。だが、その分リスクがグローバルに拡大しているのも確かだ。ユニオンバンクを基軸とする米国事業の頭打ちや、インドネシアの減損損失は、今後、さらなるリスクが顕在化する可能性も秘める。亀澤氏は米国で2年間の米州本部副本部長の経験はあるものの、グローバルな連結経営力が問われることになる。
亀澤氏は会見で「我々にとっての最大の課題はビジネスモデルをどう作るかだ」と強調。また、金融ビジネスのデジタル化への取り組みについては「オープンイノベーションが一つのキーワードになる」と述べ、スタートアップ企業との連携を強めていく考えを示した。
だが、デジタル化によるコスト削減施策は、結果的に既存ビジネスの破壊にも繋がっていく。全国に張り巡らせた店舗ネットワークのスリム化は、支店長になれない銀行員が増えるのと同義だ。「イノベーションだけでは経営はできない。抵抗勢力をどのように説得し、封じ込めるのか。力技が必要だ」。MUFGのある役員からは厳しい言葉も漏れた。