価値を生み出すためには、リベラルアーツが必要
山口:現代は、広義の意味で「リベラルアーツ」が求められている時代です。スコット・ハートリーの『FUZZY-TECHIE(ファジー・テッキー) イノベーションを生み出す最強タッグ)』では、これからの時代はMBA(経営学修士)ではなく、MFA(美術学修士)が「優秀さの証」になると言っています。
タイトルの「Fuzzy」とは文系のこと、「Techie」とは理系のことですが、「シリコンバレーではこれまで理系が褒めそやされてきたが、現在は真逆になっている。新たな問題を見つけ、価値を生み出すためには、リベラルアートが必要」と説いています。
実際に2016年、イギリスの経済紙『フィナンシャル・タイムズ』には、「ロイヤル・カレッジ・オブ・アート」がエグゼクティブ向けのプログラムを作り、人気を博しているという記事が掲載されました。
その一方で、アメリカのビジネススクールの凋落に歯止めがかからない状況です。2019年10月に掲載された『ウォール・ストリート・ジャーナル』の記事では、米国有数のビジネススクールへの志願者数は減少の一途をたどっているが、今年は一段と落ち込みが激しいというニュースを報じています。コンサルティング会社や金融機関がデザイン会社を買収するという現象も起こっています。
「アイデアが出ない」本当の理由とは?
山口:そこで重要になるのが、問題をどうやって見つけるのかということです。
実はその答えは非常にシンプルで、「現状とありたい姿のギャップ」を見つければいいのです。それが一致していないと、「大変だ、大問題だ」ということになる。つまり、希少な問題を生み出すためには、まずはありたい姿を構想することが必要になります。
「世の中はこうあるべきだと思いませんか?」
「おたくの会社はこうあるべきなのでは?」
「あなたは本来こういうふうにしたほうがいいのではないですか?」
そうしてありたい姿を描ければ、「それを実現するためには、ここに問題があります。解決しましょう」という流れになる。
「いいアイデアがない」「売れるアイデアがない」と言っている人がたくさんいますが、アイデアとは解決策のこと。問題が見つからなければアイデアの出しようもないわけです。
「ありたい姿を描く→問題を見つける」というプロセスが、とても大きな価値の源泉になっている。つまり、組織は世の中に対してきちんとビジョンを提示することが大事な時代になっているということです。