お茶の成分がストレスによる脳萎縮を予防――マウスでの研究
ストレスに長期間さらされていると、脳が萎縮したり認知機能が低下することが、動物実験で示されている。またヒトにおいても、たび重なるストレスと脳の前頭前野などの容積に関連が見られるとする研究報告がある。
このような影響を避けるにはストレスがかからない環境に移ることが一番だが、それを簡単に実行できる人はあまりいない。が、ひょっとしたら、お茶を飲むことが脳の萎縮の予防につながるかもしれない――という研究結果が「Nutrients」1月8日オンライン版に掲載された。
静岡県立大学茶学総合研究センターの海野けい子氏らは、お茶に最も多く含まれているアミノ酸で緑茶の旨味成分の1つである「テアニン」の機能性に着目し、これまでにテアニンがマウスのストレスを軽減し認知機能低下を抑制することなどを報告してきている。今回の研究では、テアニンがストレスによる脳萎縮を抑制するかを、東北大学加齢医学研究所の住吉晃氏らとの共同研究により磁気共鳴画像法を用いて検討した。
4週齢のマウスを5日間グループで飼育し環境に慣れさせた後、そのままグループで飼育する群と、仕切板により1匹ずつ個室で飼育した後に途中から仕切板を外して2匹の相部屋に移す群に分けた上で、さらにそれぞれを2分し、一方は通常の水、もう一方はテアニンを20μg/mL含む水溶液を与えるという計4条件で飼育した。
個室から2匹相部屋に移す条件では、2匹のマウスが互いに相手を侵入者と見なしストレスがかかった状態になる。このストレス状態の期間は、0、1、2、4、6カ月の5パターン設定した。一連の実験は、ストレスに対する感受性が強い「SAMP10」というマウスと、比較対照として動物実験で一般的に使われる「ddY」という計2種類のマウスを用いて行った。
まずSAMP10マウスの脳の容積を前記の4条件別に見ると、ストレスを負荷し通常水で飼育した群は、ストレスを負荷しテアニン水溶液で飼育した群や、ストレスを負荷せずに通常水で飼育した群に比較して、海馬(記憶を司り、アルツハイマー病では初期から萎縮する部位)や新皮質(脳の高次機能を司る部位)が有意に小さいことがわかった。