加えて、レモンなどフレーバー付きの無糖炭酸水が登場したことで間口も広がり、手軽に爽快感を味わえるとあって消費者に一気に浸透した。

 好調の無糖炭酸水市場に、厳しい環境に置かれている飲料メーカーも熱視線を注ぐ。清涼飲料市場は、19年まで販売額ベースで拡大を続けてきたが、20年は7年ぶりに減少する見通しだ(富士経済調べ)。

 清涼飲料市場縮小の要因は、有糖炭酸水離れだけではない。メーカーが定価で販売できる自動販売機の台数が減少を続けていることに加え、躍進するドラッグストア勢による清涼飲料の“たたき売り”も収益環境の悪化に追い打ちをかけている。

 またここ最近は台風や長雨など、天候要因で業績が下振れするケースも多く、飲料メーカーにとって明るい話題が少ない。あるメーカー幹部は、「市場が厳しい状況であっても、無糖炭酸水は安定して成長が見込める数少ないカテゴリーだ」と期待を寄せる。

 新規メーカー参入や、新商品の投入で、“炭酸水戦争”と言われるまでに、競争が激化している。

ウィルキンソンの販売量は11年で15倍
「刺激、強め。」の一点突破アピールが奏功

 無糖炭酸水の市場をけん引するのが、アサヒ飲料の「ウィルキンソン」だ。販売数量は12年連続で増加。19年は2694万ケースと、08年と比べて15倍になった。市場に占めるシェアも48%まで達し、快進撃を続けている(インテージSRI調べ)。

 ウィルキンソン躍進のきっかけは11年。この年に、「瓶だけでなく、ペットボトル容器の製品も発売した」ことが転機になったと、マーケティングを担当するアサヒ飲料の久保麻亜紗課長は振り返る。

 もともと無糖炭酸水は、バーテンダーがお酒の割り材として愛用するなど、業務用のニーズが中心だった。これがペットボトル化を機に、一気に消費者の手に届きやすくなったのだという。

 ただ、ペットボトル化した無糖炭酸水はウィルキンソンだけではない。市場で圧倒的なブランドを構築できた背景には、“ぶれない”マーケティング戦略もあった。