2019年度もネットパトロール事業は継続されるとともに、都道府県で医療機関を指導する体制などをより強化している。

医療機関ネットパトロールサイトのトップページ。現在は医療機関のサイト(広告)のみの通報を受けているが、そのほかの広告に関する規制を求める声もある
医療機関ネットパトロールサイトのトップページ。現在は医療機関のサイト(広告)のみの通報を受けているが、そのほかの広告に関する規制を求める声もある

 このようなネットパトロール事業などで違反と判定された医療機関名、あるいは、悪質な手口の医療被害を起こした医療機関名を公表するよう求める声も聞く。だが、それは現時点で企業や組織にとって不利益な内容を公表できるための法的根拠がない。さらに、行政による企業名公表は公権力による侵害にも相当するため難しい。

 その場合、医学関係学会が声明を出し、厚労省が通知を出すことで社会に注意喚起する方法もある。例えば、昨年4月、(一社)日本形成外科学会、(一社)日本美容外科学会(JSAPS)、(一社)日本美容外科学会(JSAS)、(公社)日本美容医療協会が「豊胸目的で非吸収性充填剤を注入することは実施すべきでない」と共同声明を発表した。

 このように専門家が集団でエビデンス(科学的根拠)を示した上で声明を出したことによって、厚労省が即日、都道府県に対して通知を発出し、国民向けのチラシを作成し配布した。そのチラシでは、美容医療を受けようとする人が自分で治療に関するチェックができる形式になっていた。

 また、昨年5月、日本臨床腫瘍学会も「がん免疫療法に関する注意喚起について」の声明を発表した。公的医療保険が適用になっている治療法と承認されていない治療法の違いや注意の説明が出ている。

 これまで医学関係学会は、血液クレンジングのように社会的問題が指摘された治療についても見て見ぬふりをすることが多かった。社会的影響を軽視しているのだろう。

 もう何十年も続く「悪質な医療機関からの消費者被害」「補完代替医療に傾倒しすぎて標準治療を受ける機会を妨げられる患者」がこれ以上増えることがないよう、国民に対する注意喚起のメッセージを発していくことは必要である。

 乳がんサバイバーで、キャンサーソリューションズ代表取締役社長の桜井なおみさんは「日本は公的機関から国民への情報発信が弱いと思います。米国のFDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)のような信頼できる組織から、明確でわかりやすい注意喚起の情報()が出れば、患者会の中で情報共有できるだけでなく、有害情報について発言するときも誹謗中傷のように見えなくなります」と指摘する。

 テキサス大学MDアンダーソンがんセンターに腫瘍内科医として勤務する上野直人医師は「FDAの警告情報はよくメディアで流れています。日本は不適切な情報提供に対する警告や情報提供の量が少ない印象があります」と指摘する。

 私たちマスメディアも、各組織がホームページで発表している消費者被害についての情報をもっと伝えていかなければならない。

 健全な消費社会を形成していくために、私たちはもっと国全体で被害情報を共有する必要があるだろう。

*FDAとは米国保健福祉省下の組織で、食品、人・動物用医薬品、生物学的製剤、医療機器、化粧品、放射線を放出する製品の安全性と有効性を保証している。公式ホームページにはRecalls, Market Withdrawals, & Safety Alerts(無料修理、市場撤退、安全警告)として、公告や企業からのプレスリリース情報が一覧表で公表されている。3年間分のアーカイブも残されている。