オフィスや飲食店、公共施設……など、喫煙スペースはどんどん縮小されて、喫煙者の肩身は狭くなるばかり。「ここなら吸えるだろう」と、ビジネスマンに残された聖域であったタクシーまでもが、その多くは全面禁煙となっている。彼らの嘆き節が聞こえてきそうだ。
そんなスモーカー諸氏たちに、このほど朗報が飛び込んだ。有料喫煙所「ippuku」(いっぷく)の誕生だ。これは、日本で初めて良質な環境にこだわった有料喫煙所であり、7月2日、JR御茶ノ水駅前やJR神田駅前など都内3ヵ所で同時オープンした。
このippuku、空間をアロマミストの香りで満たしているので、出入りしても全身のタバコ臭が緩和される上、外部にタバコの煙を逃さないよう設計されている。さらには、完全無人化を実現しながらも、空調や換気、入退室管理やセキュリティにも万全に対応する。
そして気になる料金は、ワンタイム利用(=1回の入場料)が50円、1Dayチケット(1日利用券)100円、1Weekチケット(1週間利用券)500円、1Monthチケット(1ヵ月利用券)1800円(※期間中何度でも入退場可)となっている。年中無休で、営業時間は6時~深夜0時だ。7月15日以降はPASMOとSuicaも使える。
ippukuを運営するのは、不動産ファンド事業やマンション事業などを手がけるゼネラルファンデックス株式会社(東京都台東区)だ。同社は、「吸う人にも吸わない人にも、気持ちよい街づくり」を理念に掲げ、「快適さ」に徹底してこだわっている。
さて、果たしてこの「1回50円」が高いのか、安いのか? ちなみに筆者が、スモーカーである隣席の仕事仲間に尋ねてみたところ、「周囲を見渡してみて、他に吸える場所がなければippukuを利用するだろう。50円はそれほど高いと思わない」とのこと。スモーカーたちの喫煙欲求はかくも切実なものかと、改めて再認識した。
このippukuのような施設が増えることは、たとえば社会問題となって久しい「歩きタバコ」などの軽減にも繋がることになり、喫煙者のみならず、非喫煙者にとっても歓迎すべきものだ。
まさしく現在、JTが旗振り役を務める“社会分煙化”の概念が、より明確に推奨されているということで、これも社会の成熟度を表すものではないだろうか。
(田島 薫/5時から作家塾(R))