この作品について、私は前回、以下のようなクイズを出題しました。

マティス夫人の「眉毛」は、何色でしたか?

このような質問をすると、ほとんどの人からは「黒」「まったく覚えていない」「眉毛の色はうろ覚えだなあ」といった答えが返ってきます。自分の感覚器官を駆使して作品と向き合うことは、「自分なりの答え」を取り戻すための第一歩なのですが、「作品をよく見る」ことは、意外と難しいのです。

そんなときにおすすめなのが「アウトプット鑑賞」です。

「アウトプット鑑賞」のやり方は至って簡単。作品を見て、気がついたことや感じたことを声に出したり、紙に書き出したりして「アウトプット」すればいいのです。

たとえば、《緑のすじのあるマティス夫人の肖像》の場合なら、「人が描かれている」「背景が緑、ピンク、赤に塗り分けられている」など、見れば誰にでもわかるようなことからはじめます。
「そんなあたりまえのことを……」と思われるかもしれませんが、こうして次々とアウトプットしていくことで、漠然と眺めるよりもはるかに「よく見る」ことができます。そのうちに、「眉毛の色が青と緑だ」というところまで気がつくかもしれません。

誰かと一緒に「アウトプット鑑賞」をやってみるとさらに面白さが増しますよ。相手の気づきが新たな気づきを生み、自分だけでは思い至らなかったようなことまで考えるきっかけになるからです。

妻の「公開処刑」ともいえる肖像画

それではもう一度、《緑のすじのあるマティス夫人の肖像》に向き合い、次のポイントを意識しながら「アウトプット鑑賞」をやってみましょう。

・「色」についてなにか気がついたことはありますか?
・「形」や「輪郭」についてはどうでしょうか?
・「筆の使い方」について特徴はありますか?