また、診療を行う医師や医療スタッフが感染する可能性も格段に高まる。開業医の約3割は60歳以上の高齢である。1人でやっている開業医の場合、その医師が新型肺炎に感染してしまえば、その医療機関は即、長期閉鎖や閉院に追い込まれてしまう。医療崩壊を起こすリスクは、あらゆる面で格段に高まるということだ(岩永直子「新型コロナ、なぜ希望者全員に検査をしないの?  感染管理の専門家に聞きました」)。

 実際、日本の約23倍のPCR検査を実施している韓国では、新型肺炎の感染者数が3700人を超え、死者20人に達している(日本はダイヤモンド・プリンセス号の乗船者を除くと、国内発生は197人、死者6人)。さらに、3万3000人以上の感染の有無を検査中で、今以上に感染者は増えると考えられる。韓国では、PCR検査を徹底的に実施したことが新型肺炎感染者を激増させる原因となってしまっているのではないか。

 新型コロナウイルスに感染したのではないかと、心配になって検査を受けたくなる国民の気持ちは理解できる。筆者も、もし感染したらと考えると不安になる。だから、PCR検査実施を増やそうとしない政府をメディアが批判し、世論が沸騰してしまう。だが、政府は世論に押されて方針を変えてはいけない。

 既によく知られているように、新型肺炎の感染者は5割が無症状。8割から9割が重症化しない。15%が軽度の肺炎で、人工呼吸器が必要となる重篤な肺炎は5%だ。死亡率は、医療体制が破綻しなければ0.4%とされている。通常は自宅での療養で全く問題がない。メディアにも国民にも冷静な対応を求めたい。

 今、冷静さを保って医療崩壊を回避できれば、新型肺炎のパンデミックは起きず、中国の武漢以外の都市並みの感染率・死亡率にとどまり、4月以降は収束していくだろう。東京オリンピック・パラリンピックは問題なく開催できることになるはずだ。

安倍政権の「言葉」を
国民が信頼していない事実が問題

 要するに、新型肺炎を巡る日本政府の対応は後手に回りがちだといった意思決定の問題はあるものの、概ね合理性があり、間違ってはいない。しかし、今回明らかになった深刻な問題は、安倍政権が発する「言葉」に対して国民が信頼を失ってしまっていることではないだろうか。